大仁田山

【年月日】

1994年11月4日
【同行者】 単独
【タイム】

タイムとらず

【地形図】 原市場

 登山口の赤沢周辺には広い有料駐車場がいくつもあるが、管理人もいないので、ずっと手前の鹿ノ戸集落近くの路側に自動車を停めた。
 ここ数日暖かく晴れていたのに、この日はどんよりと曇って、細かい雨も降っており、あまり条件もよくない。

 入間川を唐竹橋で渡って、畑のなかの新興住宅地を行くと、「四十八曲峠入口ニ至ル」という小さな道標。
 それに従って曲がると「四十八曲峠入口」という同じような道標があって、その先から小沢に沿った山道となった。
 山にとりつくまでがむずかしい里山でこういう道標の存在はありがたい。

 植林のなかを登って行くと、サラシナショウマ、キバナアキギリ、アキノタムラソウ、ホウチャクソウ、ツルニンジン、センボンヤリなどが枯れ姿。
 花として咲いているのはアキノキリンソウ、ベニバナボロギクくらいで、あたりはもはや冬枯れのたたずまいだ。
 そうしたなかでフユイチゴ、ヤブコウジの赤い実はひときわ目立つ。

 里山らしくあちこちの集落を結ぶ山道が行き交っており、すぐに小尾根の上の原市場への分岐を見たかと思うと、間野へのやや荒れた道を分ける。
 さらに、大正十三年に南高麗青年団直竹支部が建てた黒指への石標を見る。
 あたりはよく手の入った植林ですこぶる歩きやすい。

 すぐに「悪い道」と注の入った大仁田山への分岐を見る。
 この分岐は見送り、とても大事に祀られている石の地蔵様のあるところから、山頂直下に点在する細田集落内を通る車道に下りる。
 ここはとても暖かな感じの山里で柚子の大木に実がすずなりになっている。

 「命水 中ノ井戸 細田部落」と書かれた石がはめこまれたところを見て過ぎると、大仁田山入口の道標があり、そこから再び山道。
 ひと登りで竹薮に囲まれた44号鉄塔の下をくぐり、植林のなかのマムシグサの赤い実に驚きながら行くと、成木方面への分岐を分けた先の小ピークが大仁田山だった。

 植林のなかとあって展望は皆無なので、早々に下山にかかる。

 北に向かう道はこれまでの道にくらべるとか細いトレース。10メートルほどだが不快な草ヤブをこぎ下っていくと、新しい植林地で、北側の展望がひらける。

 足元にはセンブリがつぼみをびっしりとつけているが、曇天とあって花は見られない。
 それでもサルトリイバラの赤い実が鮮やかで目を楽しませる。

 小沢に沿う道で、左に奇妙な穴をいくつも見ながら行くと入間川で、木の橋を渡り、車道を10分あまりでもとのところに着いた。
 こんな山でも、登ってくると不思議な充実感が残った。