早川尾根から鳳凰三山

【年月日】

2018年7月30〜8月2日
【同行者】 全部で8名
【タイム】

7/30 北沢長衛小屋で幕営
7/31 北沢長衛小屋(5:10)−小休止・標高2300地点(5:58-6:06)
   −小休止・標高2600地点(7:08-7:20)−栗沢山(7:49-8:11)−アサヨ峰(9:27-9:41)
   −小休止・標高2553地点(10:51-11:00)−早川尾根小屋(12:06) 幕営
8/1 早川尾根小屋(4:30)−広河原峠(5:07-5:17)−白鳳峠(6:47-6:58)
   −高嶺(8:11-8:27)−アカヌケ沢の頭(9:22)−地蔵岳往復
   −アカヌケ沢の頭(10:01)−鳳凰小屋分岐(10:52-10:59)−観音岳(11:34-11:40)
   −薬師岳小屋(12:22-12:28)−南御室小屋(13:40) 幕営
8/2 南御室小屋(4:31)−小休止・標高2470地点(5:24-5:32)−杖立峠(6:38-6:48)
   −夜叉神峠(7:48-8:01)−夜叉神登山口バス停(8:41)

【地形図】 仙丈ヶ岳 鳳凰山 夜叉神峠 ルート地図(マウスホイールで拡大縮小)

 28日から29日にかけて関東・甲信を台風が直撃し、都合200ミリほどの豪雨を見た。
 28日はもちろん、広河原行き・北沢峠行きのバスは止まり、相当数の登山者が山に閉じ込められていると想像された。

 29日の朝に雨はやんだが、早朝の時点でバスは動いていなかった。
 29日に食材の買い物に行くことにしていたので、この日の午前中にバス便が復旧しなければ、登山の中止もやむなしと考えていた。

 ところが、29日の朝に広河原行きのバスが復旧し、午前のうちに北沢峠行きバスも開通した。
 北沢峠行きに乗れなければ、夜叉神峠入口までバスで行き、夜叉神峠小屋・鳳凰小屋と歩きながら北沢峠の便の様子を見て、もし不通であれば白鳳峠か広河原峠から広河原へ下山するつもりだったが、その必要もなくなった。

1日目

 3年前は、甲府駅を下りた途端にタクシーの運転手さんに声をかけられ、言われるままにタクシーに乗り、北沢峠行きの臨時バスに乗って、午前中にはテント場に着いたのだが、今回は時刻表通りのバスに乗っていく。

 広河原に着けばすでにいくらか涼しく、ほっとする。
 北沢峠は、暑さという点で、下界とは別世界だった。
 この日は長衛小屋のテント場で幕営するだけだった。

2日目

 翌朝は予定通りに出発したのだが、いろいろあって、実際には5時過ぎの出発になった。
 最初からいきなり急登で、それがどこまでも続く。

早朝の長衛小屋テント場(大きな写真)
栗沢山から槍・穂(大きな写真)

 ずいぶん登ったかと思って一本立てたが、そこは標高2300メートルほどの地点で、栗沢山までまだ3分の1くらいしか登っていない。
 でもみんな元気だった。

 標高2600地点で次の小休止をとったが、ここまで来れば森林限界はすぐで、まもなくハイマツの世界となり、周囲の展望が開けた。
 栗沢山の展望はじつにゴージャスだった。

 駒ヶ岳を南から見上げたのは初めてだった。
 雲海の彼方には槍・穂高連峰が望まれ、乗鞍岳や御嶽山・中央アルプス北部の山々も間近く見えた。
 早川尾根はそれなりに登り下りが激しく、オベリスクは遥か彼方だった。

栗沢山から駒ヶ岳(大きな写真)
北岳(大きな写真)

 アサヨ峰へは地形図では容易そうに見えるが、ゴロ石帯が続いて歩きにくく、意外に時間がかかる。
 とはいえ、アサヨ峰もまた、好展望のピークだった。
 栗沢山からは甲府盆地の向こうに見えた奥秩父は、この時間には雲海の下に沈んてしまっていた。

 早川尾根小屋へは、ピークをいくつも越えていく。
 栗沢山の登りが足腰に効いていて、なかなか疲れたが、まずまずよい時間に小屋に着いた。

早川尾根(大きな写真)
甲府盆地(大きな写真)

 早川尾根小屋が無人だという情報は、ちらほらと得ていたが、広河原でバスの運転手さんらしき人からはっきりと聞いた。
 問題は水だが、水場に行ってみると、台風のあとだけあって、細いながらも十分な湧き水が出ていた。
 他に幕営者もおらず、着いた当初は貸し切り状態で、言うことなしのテント場だった。

 着いた時間が早かったので、ラーメンを食ったり、コーヒーを沸かしたり、登山道に出ていたカノシタを取りに行ったりしたが、それでも時間が余ったので、やや暑かったがテントで昼寝をした。
 とってきたカノシタは、茹でてスープの実にした。

カノシタ(大きな写真)
振り返るアサヨ峰(大きな写真)

 雲が湧いてきはしたが、この日も天気の心配なく、たっぷり休んで疲れを取ることができた。

 この夜も快晴。
 月が明るく、ヘッドランプがいらないほどだった。

3日目

 翌朝は、予定通りに出発。
 平坦な尾根をしばらく行き、しばし急降下した広河原峠で小休止。

 白鳳峠へは赤薙沢ノ頭を越える。
 基本的には樹林帯なのだが、ピーク付近では森林限界を越えて展望が広がる。
 赤薙沢ノ頭から振り返ると、アサヨ峰がよく見えた。
 このあと雲が広がったので、早川尾根がよく見えたのはここだけだった。

 登山道を塞いでいたに頭を立木にぶつけたのは、このあたりだった。
 頭はひどく痛かったし、いくらか出血したが、どうしようもないので、そのまま歩き続けた。
 白鳳峠の小休止のときには、出血は止まっていた。

 この木に頭をぶつけたのは5人中3人だったらしい。
 まさに魔の立木だと思う。

 白鳳峠から高嶺への登りはかなり強烈だ。
 最初の急登は標高差200メートル。
 ガス越しに見える高嶺は見上げる高さだ。

イワインチン(大きな写真)
ヤマトリカブト(大きな写真)

 ゴロ石の平坦地を過ぎると、最後の急登約100メートル。
 高嶺は、これまた大展望の極上のピークだった。
 南アルプス北部の主たるピークはたいてい、登山者でごった返しているのだが、ここは他には誰もおらず静かで、登りの労苦の報われる山頂だった。

 高嶺からアカヌケ沢ノ頭までは地形図で見るほど容易でなく、刈り払いのされていないハイマツの道を大きく下る。
 鞍部からいきなり地質が花崗岩に変わると、植生も変わって、トウヤクリンドウ・ダイモンジソウ・ミヤマシャジン・イワインチン・ミヤマコゴメグサなどの草花が多くなる。
 登りはそこそこきついが、草花を見ながら登るのは気分がよい。

 アカヌケ沢ノ頭が近くなると、タカネビランジがすこぶる多い。
 クモマベニヒカゲの舞う尾根を登りつめると、オベリスクを正面に望むアカヌケ沢ノ頭に着いた。
 オベリスク前には去年も行ったのだが、鳳凰三山のシンボルでもあり、ザックをデポして記念写真を撮りに行った。

 オベリスク周辺からハイカーの数が激増した。
 タカネビランジを見ながら観音岳への鞍部に下る。

クモマベニヒカゲ(大きな写真)
トウヤクリンドウ(大きな写真)

 観音岳の登りは二段になっている。
 一段目を登りきってやや下ったところが、鳳凰小屋直行ルートの分岐で、ここからまだひと登り必要だ。
 ガスが上がってきて、いい感じはしないが、ロングコースの疲れも溜まってきたので、ここで小休止を入れてから、観音岳への登りにかかる。

 観音岳は今回山行の最高点だが、天候の悪化が懸念されたのであまり休まず、先を急いだ。
 薬師岳への尾根は、右に北岳・左に富士山と、晴れていれば最高に景色のいいところなのだが、今回は残念だった。

タカネビランジ(大きな写真)
ミヤマコゴメグサ(大きな写真)

 遠雷が聞こえ始めたので、薬師岳では止まらず、薬師岳小屋まで行って休む。
 この先、砂払を越えれば樹林帯で、雷の危険性はぐっと少なくなる。

 最初はいくらか急だが、やがて緩やかな下りとなり、最後にまたガレ場のようなところを下ると、今回最後の泊まり場である、広い草原の南御室小屋に着いた。
 この日もいい時間にテント場に着くことができた。

 南御室小屋も、トイレと水場の近い快適なテント場だった。
 小屋前に設置された防獣柵の内側では、ヤナギラン・ヤマトリカブト・オトギリソウ・シシウド・キバナノヤマオダマキなどが咲いていた。

 遠雷が聞こえ、数滴の雨粒が降ってきたが、この日も本格的な雨にならないまま暮れた。
 この夜はいささか冷えたが、眠れないほどではなく、真夜中にはまたきれいに晴れあがって、初日よりいくらか欠けた月が明るかった。

4日目

樹林帯の夜明け(大きな写真)
巨カラマツ(大きな写真)

 最終日は、ザックもずいぶん軽くなり、概ね下りばかりなので、気分も軽い。
 苺平へのトラバース道で日の出。
 もう少しゆっくり出発すれば、南御室近くの展望地からスッキリしたご来光を拝むことができたかもしれない。

 苺平からしばらく下ったところで小休止。
 苔むした林床が美しい。

 杖立峠へは長いが緩やかな下りが続くので、歩程が捗る。
 ベンチのある展望地からは、白峰三山が望まれた。

 夜叉神峠へはやや急な下りになるが、路面に石ころが少なく、歩きやすい。
 軽く登りに転じれば、夜叉神峠小屋。
 雲はまだ多くなく、ここから白峰三山をじっくり望むことができた。
 テント場を覗いたが、あまり広くはなかった。

 小屋前から最後の一本に出発。
 バス停に着いたのはジャスト8時41分で、甲府への一番バスに間に合った。
 下界は蒸し風呂のような状態で、涼しい山とは大違いだった。