白峰二山
−間ノ岳・農鳥岳−

【年月日】

2013年8月3〜5日
【同行者】 全部で14名
【タイム】

8/6 広河原(11:31)−休憩(12:36-12:45)−二俣(13:22-13:30)
   −奥の二俣(13:30-14:39)−八本歯ノコル(15:20-15:30)
   −北岳山荘(16:30) 幕営
8/7 北岳山荘(4:36)−中白根(5:21-5:28)−間ノ岳(6:41-6:58)−農鳥小屋(7:56-8:12)
   −大門沢下降点(11:06-11:27)−西農鳥岳(9:12-9:22)−農鳥岳(10:16-10:26)
   −休憩(12:32-12:41)−休憩(13:34-13:44)−大門沢小屋(14:25) 幕営
8/6 大門沢小屋(4:30)−大コモリ沢(5:42-5:52)−最初の吊り橋(6:17)
   −林道あずまや(6:46-6:54)−広河原山荘(7:47)

【地形図】 鳳凰山 甲斐駒ヶ岳 仙丈ヶ岳 ルート地図

 タンクローリーやジャンボタクシーとすれ違うので、広河原行きのバスは、なかなかスムーズに進まない。
 到着時刻は、予定よりかなり遅れて、11時を回っていた。
 広河原では、相変わらず、登山者がおおぜい行き交っていた。

 けっこうな重荷なので、あまり気が進まないが、ザックを背負って、S君と歩き出したのは、11時半だった。
 この日は、一日早く出発して、白根御池から北岳を越えて北岳山荘で幕営している先発隊に追いつかねばならないのだった。

 したがって、景色を楽しむのでなく、スピード優先で、ひたすら歩いた。
 ちょうど1年前に小休止した場所の少し手前で1回休み、次に二俣でザックをおろした。

 雪渓は、去年より少なかったが、二俣からさっそく雪渓を横断することになった。

ミヤマハナシノブ(大きな写真)
ミヤママンネングサ(大きな写真)

 昨年は花がやや少ないと感じたのだが、今年は、二俣のすぐ先から、タカネグンナイフウロやミヤマハナシノブ・ミヤママンネングサ・タイツリオウギなどが咲き乱れ、みごとだったので、ここからはいくらか、写真を撮りながら登った。

 雪渓登りに備えて軽アイゼンとストックを持ってきたのだが、軽アイゼンが必要なほどのところはなく、雪渓のふちを歩いて、奥の二俣まで行けた。

タイツリオウギ
雪渓とハクサンイチゲ(大きな写真)

 バスに乗っていると、サイレンを鳴らした救急車が抜いていき、広河原で救急隊員の方々がスノーボートの準備をしていたのだが、ヘリコプターが大樺沢上空に飛んできたので、遭難事故かと思ったのだが、ヘリはしばらく旋回したのち、飛び去った。

 奥の二俣からは小尾根に登るので、雪の上を歩く必要はなくなる。
 灌木帯を丸太ハシゴで急登するのはきつかったが、さほど時間をかけずに、八本歯ノコルに着いた。

ミヤマキンポウゲ(大きな写真)
タカネビランジ(大きな写真)

 着いたときには、間ノ岳が見えていたが、腰を下ろすと、大樺沢を吹き上げるガスにおおわれて、何も見えなくなった。
 岩場にはタカネビランジがほころび、ミネウスユキソウやミヤマオトコヨモギも咲いていた。

キンロバイ(大きな写真)
タカネコウリンカ(大きな写真)

クルマユリ
ミヤマムラサキ(大きな写真)

 コルから転石の中を少し登って、トラバース道に入ると、急登から解放されて、ほっとする。
 トラバース道を歩くのは20数年ぶりだが、咲く花のみごとさは、相変わらずだ。
 ミヤマキンポウゲ・シナノキンバイ・イワオウギ・クルマユリ・ハクサンフウロ・キンロバイ・ミヤマムラサキ・タカネヒゴタイ・タカネコウリンカ・シコタンソウなどがいたるところで咲いていた。

ハクサンフウロ(大きな写真)
フタマタタンポポ(大きな写真)

シナノキンバイ群落(大きな写真)
タカネヒゴタイ(大きな写真)

 テントが林立する北岳山荘に着いたのは、4時半だった。
 この日は、自分としてはかなり頑張ったので疲れたが、無事に本隊に合流できて安心した。

 F君にいただいた一杯のお茶が美味しかったし、テント場に着いたら、炊き込みご飯ができていたのも、うれしかった。

 ツェルトを張る場所もないほどだったが、少しスペースがあったので、そこにツェルトを張った。

 陽が落ちると、テント場は静かになったが、発電機のような機械の音と、オルゴールみたいな繰り返し音が気になり、あまり眠れなかった。
 これほどの高所でツェルトを張ったのは初めてだったが、持っている衣類をすべて着込むと、夏用シュラフでも寒くはなかった。

 ただ、湿度が高かったせいか、外気が冷たかったためかはわからないが、結露がひどく、ツェルトはもちろん、シュラフその他がかなり濡れてしまった。

 翌朝は、すばらしい天気だった。
 目を悪くしてから、降るような星空を見た記憶がないのだが、目のいい人は、すごい星空を見ることができたのではないだろうか。

北岳払暁(大きな写真)
北岳からのご来光(大きな写真)

 3時には八本歯近くに見えた月が、炊事などしている間に東に移動すると、雲海に浮かぶ富士山も見えてきた。
 4時半に出発して、中白根への登りにかかると、ご来光となった。

北岳からの富士山(大きな写真)
地蔵岳と金峰山(大きな写真)

 ほぼ快晴で、富士山・鳳凰三山・奥秩父・北岳・駒ヶ岳・仙丈ヶ岳などが一望できた。
 ゆっくりペースだが、中白根の登りはけっこう長いので、中白根で小休止。
 これから向かう間ノ岳の膨大な山容が、すごいボリュームだ。

ミヤマクワガタ(大きな写真)
ミヤマオダマキ

 間ノ岳へは、さほど大きく下るのでなく、小ピークも巻いていくので、長いがさほどきつくない。
 イワギキョウ・チシマギキョウ・ミヤマクワガタ・ミヤマオダマキなどを愛でながら登る。
 5年前には冷たいガスの中だった間ノ岳だが、今回は、晴れて涼風の心地よい山頂だった。

チシマギキョウ(大きな写真)
イワギキョウ(大きな写真)

 北岳には雲がかかり始め、駒ヶ岳あたりもはっきりしなくなってきた。
 南を見ると、塩見岳・悪沢岳・荒川中岳・赤石岳は見えていたが、聖岳は山の陰に入って、見えなかった。

間ノ岳から悪沢岳・赤石岳・中岳(大きな写真)
間ノ岳から塩見岳(大きな写真)

 この日は、まだ先が長い。
 これから、足元はるか下に見える、農鳥小屋への大下降と、目の高さにそびえる西農鳥と農鳥岳への急登だ。

 農鳥小屋へはタカネツメクサ・チシマギキョウなどを見ながらの下りだ。
 登るよりラクだとはいえ、農鳥岳がどんどん高くなっていく。

シコタンソウ(大きな写真)
タカネツメクサ(大きな写真)

 下り着いた農鳥小屋では、小屋前の広場で小休止。
 あとから到着した高校生パーティが、芝草の上にザックを下ろしたとたんに、小屋番のオジサンにいきなり怒鳴りつけられていた。

 この日の激しい登りは、西農鳥への登りでおしまいだ。
 この登りで、ライチョウの親子を見かけたが、さすがにひなたちはずいぶん大きくなっており、黄色いヒヨコではなく、成鳥のような色になっていた。

ライチョウ1(大きな写真)
ライチョウ2(大きな写真)

 見た目はきつそうだが、実際にはさほど長い登りでもなく、非常にゆっくりペースだったので、ほとんど疲れることなく、西農鳥手前のピークに立てた。

 農鳥岳へはほぼトラバースで行けるので、登り下りは少ない。
 前回来たときには農鳥岳で大展望が広がったのだが、この日はすでに雲がかかってきて、展望は得られなかった。

 この日はこれで、3000メートル峰を4つ越えた。
 次の泊まり場への急下降は残っているが、時間的にも、日没近くなるようなことはなさそうだ。
 とりあえず、ひと安心の農鳥岳だった。

ミネズオウ(大きな写真)
イワベンケイ(大きな写真)

 大門沢下降点までは、ひと下りだ。
 下降点で小休止。
 じっとしていると非常に寒いので、合羽を着込む。

コゴメグサ(大きな写真)
ハクサンイチゲ(大きな写真)

 下降点から少し下ると、風下に入るので、すぐに暑くなった。
 灌木帯に入っていくと、イワカガミやアオノツガザクラ・シナノキンバイ・ウサギギク・ハクサンイチゲ・ミヤマキンポウゲ・シナノキンバイ・タカネグンナイフウロなど、湿性の花が見られた。

ウサギギク(大きな写真)
ミヤマキンポウゲ(大きな写真)

タカネグンナイフウロ(大きな写真)
シナノキンバイ群落(大きな写真)

 あとは、針葉樹林帯の、淡々とした急下降が続く。
 左から大門沢の沢音が聞こえてくると、カワラナデシコやシモツケソウ・センジュガンピが咲く一角に出る。

シラビソ林(大きな写真)
カワラナデシコ(大きな写真)

 傾斜はゆるむが、大門沢小屋は、まだ先だった。
 小屋に着いたのは、14時半。
 まずまずの時間に、重荷を下ろすことができた。

シモツケソウ(大きな写真)
タニギキョウ(大きな写真)

 高台のテント場は、社会人ハイカーによって、ほぼ埋まっていたので、小屋の裏手の樹林帯のテント場を使わせてもらった。
 高台は景色がよいが、この日は曇っていたので、樹林帯でも変わらないと思った。
 地面が柔らかいので、ツェルトは立てやすかった。

 食事をすませてしばらくで、眠気が襲ってきた。
 前夜の睡眠不足と、この日の行動の疲れが出たのだろう。
 沢音を聞きながら、この夜はよく眠れた。

 翌朝も、4時半にいいスタートを切ることができた。
 すぐそばで幕営していた高校生たちは、4時過ぎに出発したが、石がごろごろしていて足元が悪いので、苦労したのではなかろうか。
 奈良田に着いたとき、ひどく怪我をした子がいたようだが、あまり早く出発するのはどうかしていると思う。

 最初は、怪しい橋で沢を渡り返しながら、下っていく。
 右岸を高くトラバースするようになると、原生林で、大きなツガの木などもあって、風情がよい。
 尾根を乗っ越すと、ぼんやりした沢状のところで、シナ・サワグルミ・イタヤカエデ・カツラの大木がある。

サワグルミ大木(大きな写真)
イタヤカエデ(大きな写真)

 急降下して大コモリ沢で小休止。
 ここまで来ると、林道も近い。

 吊り橋まで来ると、三段堰堤が見えてくる。
 三段堰堤の最上段の側壁が大崩壊したらしく、最後の吊り橋を渡ったところで、すぐ下に車道があるのに、大高巻きさせられた。

 車道は、崩壊地の法面補強工事に使われているらしく、砂防堰堤を作ったのが原因で斜面崩壊が起き、建設業者にとっては美味しい公共事業を提供しているという構図が、とてもわかりやすい。

 あとは奈良田まで、小1時間ほど、車道を歩くだけだった。
 温泉に入って汗を流すこともできたし、予定していたバスに乗ることもできたのだが、電車を乗り継いで秩父に戻ったら、土砂降りの雨が待っていた。