快晴の鳳凰三山

【年月日】

2009年6月6〜7日
【同行者】 全部で7名
【タイム】

6/6 御座石鉱泉(9:45)−石空川分岐(10:23-10:33)−七合目(11:25-11:35)
   −旭嶽(11:56)−燕頭山(12:25-12:45)−鳳凰小屋(14:02) 幕営
6/7 鳳凰小屋(4:00)−地蔵岳(5:05-5:20)−観音岳(7:00-7:15)
   −薬師岳(7:40-7:50)−林道(10:08)−青木鉱泉(12:00)

【地形図】 鳳凰山 

1日目

ハクウンボク落花
巨ツガ(大きな写真)

 このコースは、3年前にも歩いたことがある。
 でも、その時とはメンバーが違うし、季節も微妙に異なっている。
 3年前には3年前の、今回には今回の楽しみがある。

 御座石鉱泉に着いてみると、エゾハルゼミの鳴き声が聞こえない。
 たぶんまだ、時期が早いのだろう。

 御座石鉱泉駐車場のわきから重荷を背負って登り始める。
 ここは最初から、ミズナラを始めとする自然林の登りだ。

 足元には、ギンリョウソウ。
 ハクウンボクの花がたくさん落ちているところは、地面が華やかだ。
 朽ち木にウラベニガサが出ていた。

カモメラン
イワカガミには早かった

 登っていくと、ツガの巨木。
 これは、前回も見て、記憶に残っていた木だ。
 ツガの大木はそのほかにも数本あった。

 「嗚呼 山形一郎君」という碑のすぐ先に、石空川への分岐。
 苦しい登りはここからだ。

 自然林だけに、野鳥のさえずりが多い。
 ホトトギス・コルリ・メボソムシクイ・ミソサザイ・ツツドリなどを聞く。
 一方、草花は意外に少なく、カモメラン・ミツバツチグリ・ズダヤクシュなどを見たのみだった。

サルオガセ下がる燕頭山付近の道
ミヤマカタバミ

 七合目の表示のあるところで2度目の小休止。
 足元のマイヅルソウはようやく、咲き始めだった。

 さらに急登を続けていくと、旭嶽。
 イワカガミのつぼみがたくさん出ているが、花にはまだ少し、早いようだった。
 そのかわり、ミヤマカタバミがいくつか咲いていた。

 ササが出てくると傾斜がゆるみ、サルオガセの下がる燕頭山に着いた。
 薄くガスがかかっているものの、雨は落ちてこない。
 曇り時々雨という予報だったので、蒸し暑いのを除けば、上出来の天候だ。

 ここからは、傾斜のない道なので、ややスピードアップ。
 ミヤマカタバミやバイカオウレンは相変わらず多かったが、イワカガミの咲いているところもあった。
 野鳥の声も深山らしく、ルリビタキやウソ、メボソムシクイが多くなった。

 北側斜面のトラバースには、時おり残雪もあらわれたが、鳳凰小屋の手前は雪解け直後らしく、ハンゴンソウ・ヤマトリカブトなどがいっせいに芽生えていた。
 鳳凰小屋のテント場にはまだ、先客はおらず、ルリビタキの声が響くのみだった。

二日目

バイカオウレン
地蔵岳直下のダケカンバ林

 2時半にテントの外をのぞいてみると、満天の星空だった。
 雨のち曇りの予報だったことを考えれば、なんたる幸運。
 朝食を食べながらも、稜線に出てからの大展望が楽しみだった。

 予定通り、4時に小屋を出発。
 薄明るくなったばかりだが、山じゅうのルリビタキが鳴いているのではないかと思われるほど、にぎやかだった。
 すぐに残雪があらわれる。

 腐った雪だが、歩行には問題なし。
 ただ、雪のため、ルートが不鮮明になってしまっていた。

 道形のわからないところは、雪上の足跡をたどったが、結局道をロストしてしまったので、樹林の中を適当に登った。
 前回のトラックログと照合してみると、登山道よりずいぶん右寄りに登ってしまったようだ。

地蔵岳から望む駒ヶ岳
地蔵岳から望む仙丈ヶ岳

 左にトラバースして正規の登山道に出ると、左手のダケカンバ林が朝の斜光線を浴びて、オレンジ色に輝いているところだった。
 前方にオベリスクが見え、後方に観音岳が見えるのだが、賽の河原までは思ったより時間がかかる。
 風化したかこう岩の白ザレは崩れやすく、苦労している人もいた。

 登っていくと、観音岳の左肩に富士山がのぞく。
 オベリスク基部まで登ると、富士山はようやく左半身をあらわした。
 ここでちょっと長めの小休止。

 駒ヶ岳の雪はほとんど解けてしまったようだが、仙丈ヶ岳はまだ、大量の残雪におおわれていた。
 駒ヶ岳の右肩には槍・穂高連峰がのぞき、左には乗鞍岳がよく見えた。

 

オベリスクと八ヶ岳
観音岳から地蔵岳を振り返る(大きな写真)

 雪の斜面をキックステップで登って、主稜線。
 快晴なのだから当然だが、大量の残雪に覆われた白峰三山の景観が素晴らしい。

 観音岳へは、少し下って登り返す。
 鳳凰小屋への近道を分け登りにかかるところで、雪の上をトラバースする踏みあとを見つけて軽アイゼンをつけたが、ロープの下がった急斜面を直登するのが正式なルートだとわかったので、再びアイゼンをはずした。
 ここでちょっと、タイムロスをしてしまった。

 観音岳への登りは、残雪を縫いながら高度を上げていく。
 3年前には、このあたりでキバナシャクナゲが咲いていたのだが、今回は一つも見ることができなかった。
 背後を振り返ると、地蔵岳の彼方に八ヶ岳や奥秩父がそびえているのが、間近く見えていた。

 今回の最高峰である観音岳は、周囲に遮るものがなにもなく、周囲の景観はいくら見ても飽きることがなかった。
 白峰三山の左の高い山が気になったが、たぶん、カールを抱いている左のピークが悪沢岳、右のピークが荒川中岳だと思う。
 その左にも高い山が見えるが、そちらは聖岳ではないかという気がする。
 これから向かう薬師岳は目の前で、その向こうには富士山がそびえている。

 薬師岳へは下り気味にトラバースしていくので、あっという間だ。
 時間もまだ早いので、名残惜しいが、帰りの電車の時間も気にかかる。
 北岳をバックに記念写真を撮って、中道コースを下る。

観音岳から薬師岳と富士山を望む(大きな写真)
薬師岳からは北岳が近い(大きな写真)

 薬師岳直下は残雪がたっぷりで、踏み抜くとやっかいな箇所もあったが、案じたほどの積雪ではなく、目印もたくさんあったので、ルートは明瞭だった。

 中道コースは、1500メートル余の標高差を一気に下る。
 地形図を見ても、恐るべき下りであるが、軽装・重装の登山者が記憶しているだけで4人、登ってきた。
 大した根性だと思う。

 御座石コースがコメツガ中心だったのに対し、中道コースは最初がダケカンバ林、その下すぐにシラビソ林となる。
 鳴く鳥はメボソムシクイやルリビタキが中心で、草花はほとんど見ることができない。

 標高2000メートルほどの、傾斜がやや緩くなったところで小休止。
 真っ青だった空に、いつしか雲が出てきて、白い空に変わっていた。

 その後また急な下りだが、標高1800メートルあたりから再び緩やかになる。
 このあたりからは、周囲はカラマツの植林地となる。
 マイヅルソウ・ズダヤクシュなど、地味な花があらわれ、コルリやツツドリなど、中腹の鳥の声が聞こえ出す。
 足元には、モリノカレバタケの仲間の菌輪。

 この前に来たときには、パーティのかなりがへたばったのだが、今回は全員とくに問題なく、林道を渡って、最後の下り。
 エゾハルゼミのビィビィという鳴き声がにぎやかだ。
 モミ林をジグザグに下って、フタリシズカやシロバナノヘビイチゴの咲く、広い林道に出る。

 青木鉱泉に着くと、ここではハクウンボクがまだ、さかんに咲いている最中だった。