大樺沢から雨の北岳

【年月日】

1991年7月22日
【同行者】 単独
【タイム】

広河原(4:00)−二俣(6:10)−八本歯(8:05)−北岳
(8:55)−北岳山荘(9:55)−広河原(2:55)

【地形図】 鳳凰山、仙丈ヶ岳、間ノ岳

大樺沢上部から鳳凰三山を望む
ミヤマハナシノブ

 甲府駅前のバス停で新聞紙を敷いて寝ていると、タクシーの運転手が相乗りで行かないかといってきたので、すぐ隣にいた男性客とともにそれに応じ、おかげで3時半すぎに広河原に着いた。

 夜が明けてくると、空はどんよりと曇っているが、大樺沢の前方に北岳が見えていた。

 1時間ほどで大崩壊のところに着き、小休止。
 オニシモツケ、センジュガンピ、クガイソウ、ウバユリ、ホタルブクロ、カラマツソウ、ミヤマハナシノブ、イブキトラノオなどが咲いていた。
 橋を渡って右岸沿いを行くと、雪渓。

 イチリンソウ、クルマユリなどが咲いており、サンカヨウは青い実をつけていた。
 コマドリのさえずりが広い渓に響いていた。

 右岸から踏みあとは一度雪渓におり、しばらくは雪渓の上を歩く。
 バットレスがずいぶん近くなり、そろそろ二俣かと思われたころ、タカネグンナイフウロやイブキトラノオ、ミソガワソウなどの湿性のお花畑。

 八本歯沢に入ると、傾斜がきつくなる。
 このあたりで標高がやっと2200m程度だから、山頂までまだ標高差にして約1kmあることになり、北岳は高いと実感。

 八本歯はすぐ前の方に見えているのだが、ちっとも近くなってこない感じ。
 水流が細くなってきたあたりで水を補給しながら一息いれる。

 前方には鳳凰三山、八ヶ岳などが見えてきていた。
 花もミヤマキンポウゲ、ヨツバシオガマ、キバナノコマノツメなど高山性のものが見られだす。

 そこからすぐ上に八本歯まで40分という道標があり、急な支稜に取りつく。
 ハシゴを交えたジグザグをひたすら登りつめていくと、まわりにハイマツが出てき、ハクサンイチゲの咲く八本歯だが、天気予報になかった雨が落ちてきた。

 トラバース道の分岐まで登ると、雨と風が激しくなってきた。
 重荷を岩陰にデポし、空身で山頂へ。

 ミヤマオダマキ、オヤマノエンドウ、シナノキンバイ、ミヤマキンバイなどが咲いてはいるが、山頂の展望は皆無で、風雨が激しいので、早々に引きあげてしまった。

 ザックをおいたところから、北岳山荘へ。
 トラバース道は風はあまりこないが、雨は相変わらずである。
 この道にはハシゴや鎖のついた桟道があるが、花の美しさは格別だ。
 山頂付近で見た花の他に、チシマギキョウ、ハハコヨモギ、クロクモソウ、クモマグサ、シコタンソウ、ミヤマムラサキ、ミネウスユキソウ、ハクサンシャクナゲ、キンロバイ、イワオウギ、タカネヤハズハハコなどが咲いていた。
 中でも斜面いっぱいのシナノキンバイとハクサンイチゲはみごとだった。

 北岳山荘にに着いたのは10時前。
 間ノ岳に向かう尾根の上へあがると、相変わらず小雨まじりの強い風が吹いていたので、塩見までの縦走意欲が失せ、戻ることに決めた。
 帰る気になると、花もゆっくり見ていける。

 雨のあいまをみて、花の写真を撮りながらゆっくり下った。
 二俣の手前まで来るとガスが晴れ、鳳凰が見えた。
 どうも荒れているのは3000mの稜線だけのようだった。

 4泊5日分の食料と幕営用具はまったく使わず、その日のうちに家に帰った。