四国札所をめぐる
− 天こう峯往復 −

【年月日】

2022年11月3日
【同行者】 単独
【タイム】

岩下バス停(8:30)−天こう峯(10:40-11:16)−岩下バス停(12:14)

【地形図】 日名 ルート地図

 長者山から下山したあと、まだ早かったので、天こう峯に行ってみた。

道祖神
千手観音

 岩下バス停わきに自動車をとめ、「参道」の表示に従い、U字溝に沿って登山道に入った。
 入口にお堂があり、二十三夜塔と道祖神が立っていた。

 今はお参りする人もほとんどいないと思われる。
 道は部分的に踏みあと化する。

 石仏は、数体ずつ、まとまって建てられている。
 風化がかなり進んでいるが、表情はとても素朴だ。
 ここでまたも、妄想。


ある日

(A助) ちょっくら頼みがあるんだが。
(高遠の石仏師D蔵) 仏様刻みのことかい。
(A助) うん、観音様のことだ。じつは、観音様の顔を、20年前に亡くなったG右衛門お爺に似せて刻んでもらいてえ。
(D蔵) わけねえことだ。おれが子どものころ、麻を売りに諏訪へ行くとかでよく、うちに寄ってくれたよ。飴などもらって嬉しかったから、よく覚えてらぁ。

数日後

(A助) おい、お婆さん。観音様が彫り上がったっつうから、見てみろ。
(I婆さん) どれどれ。あれまぁ、お爺さん ! うわーん、これはお爺さんじゃねぇか !
(A助) お爺さんだけじゃねぇよ。
(I婆さん) あやー、こっちの薬師様は、若くして死んだ、向かいのJやんじゃねぇか。おらあ、生娘のころ、好きだったんダニ。
(A助) そうなんか。四国八十八ヶ所の石ぼとけ様は、D蔵さに頼んで、亡くなった村の衆の顔に刻んでもらっただよ。死んだお爺お婆が、流行り病から村のみんなを守ってくれるようにってな。
(I婆さん) うわーん。うわーん。うわーん。

石仏
スギエダタケ

 ずっとスギ林で、スギエダタケがそこここに出ていた。

 尾根にとりつくところから雑木林。
 標高が低いため、紅葉は長者山より遅い。

 ジグザクに登れば頂上は近く、広い作業道に出る。
 林道終点のようなところに看板があって、石仏の調査は、比較的最近になって行われたことが記されていた。
 とても貴重な仕事だ。

 金毘羅神社は痕跡だけ残っていて、すぐに山頂。
 石仏は北アルプスを向いており、展望図なども設置されているが、今は草が繁茂して、展望はほとんどなし。

 すぐに来た道を戻った。

麻煮の釜屋
麻煮桶

 下山後、自動車をとめたところの近くにある、麻煮の釜屋を見に行った。

 二階建ての建物の中に大きな桶があり、桶の中に筒状の釜があるらしい。
 説明板には昭和10年代の築造と記されており、じつにすごい産業遺跡なのだが、さほど大事に保存されているようには見えなかった。

 石仏や、このような史跡が朽ちていくのは、残念極まりなく思える。