蛇子谷休憩所前の駐車スペースに9時半前に着き、身支度をして登りはじめた。
桑野橋からの林道に積もった雪は15センチくらいだが、中途半端なかたさなので、とてもやっかいだ。
け散らすことも踏みつぶすこともできず、足がとられて重くなる。
いくつ目かのカーブの先、安曇川を見下ろすところでスコップやワカンなどを持った先客が腰を下ろして煙草を吸っていた。
きくと、頂上付近は1メートルほどの積雪があるので、ここから4時間はかかるだろうとのことだった。
ここからは消えかかったワカンのあとや犬の足あとをたどりながらの登りとなった。
11時前に少し広くなったところで大休止。
ここから傾斜が少しきつくなり、足を雪から抜くのに力がいった。
林道が終わり、ようやく蛇谷ヶ峰への登山道。
マツ混じりの植林の中だが雪がやや柔らかいので、足を抜くのがいくぶん楽。
いくらか急なところを登っていくと周囲は雑木林となり、安曇川べりの集落がようやく遠くなってきた。
高度が上がったせいか、雪が深くなり、サラサラした感じになった。
テレビの共同受信施設のわきを過ぎると尾根道となり、急なところと比較的平坦なところが交互にあらわれる。
すでに12時を回った。
さっきの人が言っていたように、雪は1メートルを超えているようだった。
木の根ぎわは雪がとけてぽっかりとあいたようになっている。
天狗の森というピークからほんの少し下ってまた急な登り。
右の方に白い武奈ヶ岳が堂々とそびえている。
電波の反射板が建っているところはとても展望がよい。
シャクナゲが生えていて、深山らしい雰囲気もある。
いったん下ったあとの最後の登りは急傾斜の直登。
空がしだいに近くなる。
1時半に蛇谷ヶ峰着。
展望は三六○度。空は快晴で群青色。
風もない。
どこまでも山が見える。
広い琵琶湖の向こうにひときわ高い伊吹山がそびえている。
朽木スキー場の方からの足跡がついていた。
下山は大またで歩くが、深雪のため、転んでもクッションの上のようで痛くない。
ウソがフィーフィーと鳴いている。
メジロやコガラは群れてにぎやかに鳴くがウソは1羽で気品高く鳴く。
丸みを帯びた哀愁のある声だ。
今気がついたが、この山はリョウブの山だ。
枯れた花穂に雪がついて太陽の光に輝く。
盛夏の玉原にはリョウブの甘い匂いが充満していたが、この山もそんな感じになるのだろう。
山道をどんどん下るより、林道にでてからの重い雪の方が大変だった。
自動車を停めたところについたのは3時半だった。
気分は最高だった。