比良駅からイン谷口行きのバスは、まだ一時間は出ないというので、歩くことにした。
正面谷では雪解け水がなかなかよい音をたてていた。
この沢には数十メートルごとに巨大な堰堤がかかっていた。
大山口あたりからの登山道には、落石がとても多く、あまり快適でない。
石の落ちているところは急いで通り、落石のない所にくるとほっとする。
青ガレの基部で左岸に渡り、ガレのふちを少し登り、最後はコケのついた安定していそうな石を選んでトラバース。
ゴーロの多い沢のツメのあたりの雑木にタマキクラゲ。
このきのこ、図鑑に食えるとは書いていないが、毒ではない。
キクラゲとりをしていたら、おおぜいの登山者に抜かれた。
金糞峠は、琵琶湖がよく見えて、感じのよい場所。
峠の上は強い風が吹いていて、休む気にならないが、少し下ると、うそのように風はなくなった。
峠を下るとすぐに水量のある沢。地形的に、何か変な感じ。
沢を何度も渡り返し、ジグザグ登りとなる頃には、あたりはすっかり雪山。
中峠も金糞峠と同様、風が吹いていた。
ここからは、トレースはないが、天気がよいのでコヤマノ岳に向かうことにした。
くるぶしくらいの軽い、快適なラッセル。
上部までくると、いっきに展望が開け、比良岳方面の白い連峰が視界に飛び込んできた。
目の前には堂満岳の秀麗な山容。
はるか下には琵琶湖。
コヤマノ岳からは白く光る武奈ケ岳。
美しい山だ。
シャカ岳から北の山もよく見えた。
ゆるく下っていくと、神戸大ワンゲル部のテントが張ってあり、そこが登山道だった。
八雲ケ原からの道と出合い、ついで赤ザレのえぐれた道の登りわずかで、西南稜の道と合わさり、12時半に、武奈ケ岳。
三六○度の展望はいうことなし。
コヤマノ岳は、ブナの木に雪がついていて、たいへん美しかった。
蛇谷ヶ峰の雪は、上部のみだった。
早々に下るのは惜しいが、登りに5時間近くもかけてしまった。
だが、この日のうちに秩父に帰るので忙しい。
下山ルートは、コヤマノ岳の神戸大テントから八雲へとった。
スキー場の雪は完全に融けており、ところどころ地肌があらわれていて、登山者が尻セードを楽しんでいた。
2時のゴンドラに乗り、リフトを乗り継いで、イン谷口についたのは2時半。
比良駅には3時前。
枚方に帰ったのが5時。5時半に枚方を出、新幹線や西武線を乗り継いで、秩父に帰ったのは夜12時前。
さすがに疲れてしまった。