大峯は、二万五千分の一「浅間隠山」の図幅の片すみにのっている小ピーク。
登山道の記載はないが、近くを林道が走っているので、ヤブのこぎ登りを覚悟して出かけた。
三沢川沿いの林道をしばらく走り、途中で左折して、大日陰支線に入る。
地形図に、「営林署専用道路」とある道だ。
しばしで、「作業道大峰線」(地形図に記載なし)が分岐するが、その少し手前で、自動車を止めた。
前日にくらべるとずいぶん寒く、冷たい風が吹いていて、風花が舞っていた。
この作業道は、林道よりりっぱな道路だった。
日曜日なので、工事はやっていなかったが、平日には治山工事がおこなわれているのだろう。
しばらく歩くと、前方になかなか形のよいピークが見えてくる。
これがめざす山だった。
傾斜は急だが、山頂まで、ほんのひと登りという印象を受けた。
水流のない沢で堰堤工事をしている手前に、ユンボと資材がおいてある。
ブル道もあったが、途中で消えそうだったので、そこから尾根にとりついた。
ピークから北東に伸びる急な尾根だ。
はじめはシカ道を拾いながら行くが、ヤブはほとんどなく、測量に使ったらしい目印とコンクリート標柱が立てられていて、まぁまぁ歩きやすい。
あたりは、雑木をまばらに伐り残したところにヒノキを植えた、混植の植林地。
一面のヒノキ林とちがって、見た目もよいし、下草も少なくて、苗の成長もよさそうだ。
ただ、将来、苗が成長して、雑木を伐らなければならなくなったとき、ヒノキを傷つけずに伐るには、技術が必要だろう。
背後には、榛名連山が、のびやかにそびえていた。
コン柱伝いに登るので、ルートは明瞭だが、最後はたいへん急だった。
沢の高巻きほどの登りだったが、ツツジの刈り払いがされていたので、多少は登りやすかった。
山頂は、ツツジが部分的に刈られていて、展望がよかった。
とくによかったのは北側の展望で、榛名の左に小野子三山、蟻川岳、高田山などが望まれ、間近には、浅間隠、竜ヶ岳、笹塒山がそびえていた。
浅間隠山は、北から見ると、浅間山をスケールダウンしたようなまるい形をしているのだが、東や南から見ると、すばらしくとがった鋭峰で、とても登らずにはいられない姿をしている。
とても1500メートルに満たない山とは思えない高度感だ。
ただ、大峯からの浅間隠・笹塒山方面への展望には、地形図にのっていない送電鉄塔が、無粋にじゃまをしている。
これだけの山岳展望は、そうそうあるものではない。
低山趣味のささやかな楽しみである展望を傷つけてもらいたくないものだ。
しばし展望を楽しんだのち、下山にかかった。
帰りは、ピークの東に作業道らしき道形が見えたので、急傾斜の支尾根を、立木にすがりながらずり下ると、思惑どおりに、堰堤工事をした際の作業道に降り立つことができた。
もとの林道まで、山頂から15分しかかからなかった。
タラノキの多い林道を歩いていたら、向こうから鉄砲をかついだハンターが来た。
大峯に獲物はいなかったかと聞くので、動物はいなかったし、このへんは鳥獣保護区だよというと、ここらへんは、保護区と保護区外との微妙な境界線なんだと弁解した。
ほどなく、自動車に戻れた。
これから急いで帰って、落ち葉たい肥の切り返しをしなければならない。