春まだ浅い山里
- 大前から小前 -

【年月日】

2006年2月25日
【同行者】 単独
【タイム】

札所34番入口(11:43)−札立峠(12:20)−大前山(12:48)
−小前分岐(13:11)−小前(13:40)−小前入口(13:55)
−華厳の滝駐車場(14:11)

【地形図】 皆野 ルート地図

34番前の不動様
静かな小前集落

 小沢をはさんで水潜寺の隣は、秩父事件の時に下日野沢村小隊長をつとめて軽懲役6年をくらった新井紋蔵の屋敷跡だが、道路拡張工事の最中だった。
 寂寥感ただよう屋敷跡だったが、この工事でいよいよ跡形もなくなってしまうのか。

 そろそろ札所めぐりの観光客が動き出す季節だが、水潜寺に人影はほとんど見あたらなかった。
 境内には、どことなくバブリィな感じのする、新しげな観音像が林立しているが、石材工場で規格通りに作られたように見えるそれらを眺めても、ちっとも心に響くものがない。

 そんな中で、峠道のわきに立つ、風化の進んだ不動像が味わい深い。
 足元に座った三猿などは、ちょっと見ると単なる石の突起にさえ見えるが、ここに立って過ごしてきた長い時間を思わせる。

 沢沿いの峠道には、ダイコンソウ、アズマイチゲ、タチツボスミレなどが葉を広げ始めており、いつ花が咲いても不思議でないまでに、春は進んでいた。

 ひと登りで札立峠。
 大正時代の石の道標がある。

 ここからは先週と同じコース。
 改めてノッキンボウを眺めるが、金精様というよりオバケのQ太郎に似ている。

 大前山を越えて天狗山の分岐から、今日は大前にダイレクトに下る道に入る。
 すぐにスギ林となり、先週出てきたところのすぐ上に降り着いた。

 今日は大前から小前への山道を歩くのが主たる目的だったので、先週とは逆に、暗いヒノキ林を登り返す。
 小前分岐から道標に従って下ってみるが、この道はほとんど廃道。
 踏みあとはあるが、へたに下るとあとが大変だ。
 この道をロストした段階で、今日の山歩きの意味は半ば失われた。

八坂神社の巨モミ
小前旧道に生えたウバユリ

 やむなく尾根に登り返し、尾根通しに小前から奥に続く林道に下った。
 秩父困民党の拠点集落の一つだった小前も、静かに春を待っている状態だった。
 八坂様の境内にはプランコやシーソーが設置してあってほほえましいが、現在、これで遊ぶ子どもはいるのだろうか。

 バスの通う車道に下る山道が残っていたので、それを下る。
 小前旧道は、今のところ道形もはっきりしているが、通る人もなく補修もされていないので、草木が生えてやがてヤブに埋もれるだろう。