蓮華温泉から白馬岳

【年月日】

2005年8月8〜12日
【同行者】 多数
【タイム】

8/8 蓮華温泉幕営地で幕営
8/9 蓮華温泉幕営地から約1時間で撤退
8/10 蓮華温泉幕営地(5:11)−白馬大池(9:00)−小蓮華山(11:42)
   −白馬岳(13:50)−村営頂上宿舎(14:20)
8/11 村営頂上宿舎(4:30)−鑓ヶ岳(6:45)−鑓温泉(8:57)
   −白馬尻幕営地(13:50)
8/12 白馬尻幕営地(5:35)−猿倉(6:20)

【地形図】 白馬岳、白馬町 ルート地図(トラックデータは部分のみ)
【関連ページ】 白馬連峰で見た花(1) 白馬岳周辺
白馬連峰で見た花(2) 鑓温泉周辺

1日目 (蓮華温泉幕営地まで)

 朝一番の西武秩父発に乗り、鈍行を乗り継いで大糸線平岩駅。
 大糸線は、南小谷以北が西日本会社で昔のままのディーゼルカーだ。

 蓮華温泉に着いたのは午後も大きく回った時刻。
 この日は、蓮華温泉で幕営。

2日目 (蓮華温泉幕営地停滞)

兵馬の平から望む朝日岳
オタカラコウ
 早朝出発の予定だったが、パーティのひとりが体調不良のため小停滞と決定。

 その間、兵馬の平を一回りした。

 兵馬の平は小広い湿原だが、スゲ類が繁茂していて草原化が進んでいるもよう。
 オタカラコウとシモツケソウ、オオバギボウシなどがたくさん咲いていたが、夏の花はほぼ終わっており、いかにも初秋の風情だった。

 残雪をまとった朝日岳や雪倉岳が、青空によく映えていた。

 平の周囲はブナ林で、エゾアジサイ、ツルアリドオシ、タマガワホトトギスなどがちらほら咲いており、ドクベニタケやツチカブリが出ていた。

 しばらく待ったが、体調の回復がみられないため、ひとりはここからリタイアと決定。
 予定していた朝日岳へのコースを変更して、白馬大池に向かった。

 ところが、歩き出して1時間ほどで、またもパーティに体調不良者が出たため、退却。
 こちらはやや症状がひどく、付き添いのもうひとりとともに即刻下山。

 この日午前だけで3人がリタイアするという波乱の出だしとなり、大池に向かうにもやや遅い時間となったため、天気はよいが引き続き停滞と決定。

3日目 (蓮華温泉幕営地〜白馬岳)

雨のやみ間の白馬大池
雨に濡れるタカネツメクサ
 夜半からテントを叩く雨音がにぎやかになり、いよいよ出発というときになって悪天という皮肉。
 それでも気を取り直して重荷を背負う。

 メボソムシクイが陰鬱にさえずる中、雨足は少しずつ強くなっていく。
 ソバナ、タマガワホトトギス、カラマツソウ、ヤマブキショウマなどの花が風に揺れている。

 天狗の庭直下まで来ると、激しい稲光・雷鳴とともに土砂降りの雨となった。
 露岩帯に出るのは危険なため、しばらく待機。
 若者たちからは多少の弱音も漏れた。

 雷が遠のいた後、登高を再開。
 天狗の庭を急いで通過し、低木帯をトラバース気味に登っていく。

 登山道わきの斜面からは大量の水が噴き出し、しぶきが散っていた。
 風雨ともに小康状態となったころ、白馬大池に到着。

 小屋外のベンチで大休止としたが、ガスが切れて小蓮華岳が望まれ、このまま好天に向かってほしいと思った。

 ここからは森林限界上の岩稜帯となり、高嶺の花が美しい。

 ムカゴトラノオ、コゴメグサ、チシマキキョウ、ウメバチソウ、トウヤクリンドウ、ミヤマアキノキリンソウ、タカネナデシコ、イブキジャコウソウ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマアズマギク、エゾシオガマ、ウサギギク、ネバリノギラン、ハクサンフウロ、クロトウヒレン、ヨツバシオガマなど。
 写真を撮りたいが、風雨が激しくてそれどころではないのが残念だった。

 やがて雨はやんだが、越後側から吹き登る強風が登行を妨げる。
 三国境を過ぎると、ミヤマクワガタ、タカネシオガマが多くなる。
 ウルップソウはほぼ咲き終わり。

 白馬岳山頂は立っているのがやっとの強風のため、記念写真だけ撮って急いで通過。
 イワオウギ、タカネヨモギ、ミヤマキンポウゲ、ハクサンイチゲなどが咲く中を下る。

 頂上宿舎に着いてほっとしたのはいいが、強風のためテントの設営がたいへん困難。
 みんなで悪戦苦闘したが、1張はポールが折損。もう1張もポールが曲がってしまい、設営不能になったため、小屋泊をやむなくされた。

 サブリーダーの若者は悔しそうだったが、これもいい経験だ。
 折れたポールは応急修理をしたが、この先、稜線での設営には不安を感じたため、唐松岳への縦走は不可能となった。
 この山行に備えてトレーニングを積んできた若者たちにとって、これも悔しいことだった。

4日目 (白馬岳〜白馬尻幕営地)

白馬岳直下で見たご来光
杓子岳付近で見たコマクサ
 一夜あけても越中側からの強い風が吹いていたが、前日に比べればずっとましだった。
 この日は白馬尻までの予定だったが、雨後の大雪渓は回避して鑓ヶ岳に向かう。

 出発したときはガスだったが、白馬岳を少し下ったところでほんのわずかの間ガスが切れて、昇る朝日が見えた。
 トリカブトやクルマユリが咲き、10メートルほど先にはライチョウが遊ぶ、いいシーンだった。

 その先はまたガスと強風。
 クモマグサ、ミヤマアケボノソウ、イワオウギ、トウヤクリンドウ、イブキジャコウソウなどがそこここに咲くが、ゆっくり立ち止まるゆとりはほとんどなし。

 鑓ヶ岳を越え、鑓温泉への下山口を少し下ると、風がなくなり、一転して蒸し暑い下りとなった。  岩稜帯を過ぎると大出原の湿性お花畑。
 ダケカンバやナナカマドの矮性木が点在する中、アオノツガザクラ、ハクサンコザクラ、チングルマが咲き残っている。
 ミヤマキンバイやクルマユリの大群落もすばらしかった。

 鑓温泉のすぐ上、鎖のかかった岩場ではカライトソウやニッコウキスゲが咲き始め。
 高度をぐんぐん下げるので、オタカラコウ、ミソガワソウ、タテヤマウツボグサ、ソバナ、オオバミゾホオズキなど、やや低いところの花が混じってくる。
 鑓温泉のテント場では、シロウマリンドウが咲き始めていた。

 さらに下ると、ダケカンバなどの低木林の小尾根の乗っ越しが続く。
 小さな登りが断続するので、なかなかのんびりできない。

 キヌガサソウ、白花ホタルブクロ、クガイソウ、チョウジギク、サラシナショウマ、オニシモツケ、エゾシオガマなどが多い。
 シナノオトギリが多い雷岩周辺の草付では、シナノナデシコも点々と咲いていた。

 小日向のコルを越えると、キンコウカやイワショウブ、オヤマリンドウ、ハクサンシャジン、ワレモコウなどが咲く湿地帯。
 ここもなかなか風情がよい。

 さらに下ると、コマドリのさえずりの響くブナ林。
 明るい木陰には、オオレイジンソウ、クロバナヒキオコシ、タマガワホトトギス、キヌガサソウ、エゾアジサイなどが咲く。
 エゾアジサイのブルーがとても神秘的だ。

 林道に出てから白馬尻へ登り返し。
 疲れに蒸し暑さも加わって、ややバテ気味。

 白馬尻では、今朝の遭難の救出作業から帰ってきた救助隊の人々が厳しい表情で下山してきていた。
 雲が再びたれ込めてきたが、設営・夕食まで天気がもってくれたので助かった。

 その後また強い雨となった。

雪渓わきに咲くミヤマキンポウゲ
雨の前の大雪渓
5日目 (白馬尻幕営地〜猿倉)

 強い雨が一晩中降り続き、朝になっても状況は変わらなかった。
 雨の中の撤収は、どうにも気が進まないものだ。

 この日は猿倉まで下山するだけだ。

 水流と化した登山道から林道に出、しばらく歩いて猿倉山荘への山道に入る。
 ブナやトチの大木が随所にあって、いいところだ。

 猿倉山荘の軒下でしばらく雨宿りし、バスで白馬へ。
 電車の発車までまだ時間があったので、白馬グランドホテルの温泉で5日間の汗を流す。

 アクシデントと悪天で散々な山行きだったが、こういう日もある。
 いい日もあるのだから、若者たちには、山歩きを続けてほしいと思った。