2日目 (大天井岳からババ平)
 翌朝、隣にテントを張った高校生のパーティが真夜中から食事の支度をはじめ、騒がしくなったので、目がさめた。
 3時に外をのぞいてみると快晴で、満天の星空に天の川が流れていた。
 水をケチったためおいしくない朝食のあと、テントを撤収し、ザックを小屋の前においてご来光を拝みに出かける。
 4時47分、いつもながら感動的な夜明けであった。
| 大天井岳からの黎明 
  | 
 槍ヶ岳に向かって行動を開始する。
 歩きはじめなので、慎重に行く。
 大天井ヒュッテを過ぎてしばらくは、稜線からはずれて東側斜面のお花畑の中を行く。
 尾根が左に曲がり、北鎌尾根が見えるあたりにも、昨日のよりずっと小さなひなを5羽も連れ歩いているライチョウがいた。
 今日のはかなり警戒していて、けがをしたようなふりをしてしきりに気をひいてみせた。
 西岳ヒュッテからは、水俣乗越に向かっての急降下となる。
 ここまで暑い陽を浴びて歩いてきたが、ようやく日陰に入ることができた。
 とはいえ、鎖場やハシゴが連続しているので、気が抜けない。
 水俣乗越への下りは単純でなく、鞍部の中にいくつかの小ピークがあるので、心理的に疲れる。
 水俣乗越に着くと、北に高瀬ダムが見えた。
| ライチョウ 
  | 縦走路から鷲羽岳を望む 
  | 
 ここからの登りは長いが、今日最後の登りだと思って頑張る。
 登り下りはさほどなく、一方的な登りなのでまだましと思う。
 しばらく行ったところに左に鎖をつけた大岩があり、足元がザレたいやなところ。
 足元が定まらないので鎖にすがって登っていくが、息が切れる。
 その次は長いハシゴが2ヶ所。
 ふたたび尾根の上に出ると槍の穂先が目の前にせり上がっていて、急な登りにも慣れてくる。
 大槍ヒュッテまで来ると腹が減ったので、ここで食事。
 水を1リットル買って、ベンチで食べた。
 ここから空身で槍を往復する人もけっこういた。
 槍の穂先には次第にガスがかかってき、雲ひとつない好展望というわけにはいかなくなってきたが、雷雨になるほどではなかった。
 大槍ヒュッテから最後の登りにかかる。
 キリンソウ、ミヤマオダマキ、イワオウギ、シコタンソウ、ツガザクラ、イワヒゲなど、それまでになかった花が咲いており、感じが違っていた。
 ミヤマダイコンソウも多くなってきた。
| 縦走路から槍ヶ岳 
  | 
 おおぜいの人でにぎわう槍岳山荘で一息入れて、山頂に向かう。
 中腹から上では、登りと下りで別ルートになっている。
 なかなかの高度感だが、困難なところではない。
 狭い頂上は、ちょっとしたラッシュだった。
 山荘に戻ったのはちょうど12時と、テントを張るにはやや早い時刻だったので、下ることにした。
 殺生ヒュッテまで急下降し、槍沢にそってお花畑の間を下っていく。
 かなりきびしい下りだが、登ってくる人にくらべれば天国だといえる。
 登る人はみなあとどれくらいかと尋ねてくる。
 槍沢コースは長くてつらい登りなんだろう。
 ババ平のテント場に着いたのは2時半を回っていたため、かろうじてテントスペースを見つけることができた。
 あとから来たパーティは槍沢の河原に幕営していた。
 テント場代は翌朝払うつもりでテントを張り、食事をしていると、槍沢ロッジの人が廻ってきたので、その時に支払う。
 隣に幕営していた埼玉県立某高校がうるさかったので、耳せんをしてじっとしていると、いつのまにか眠ってしまった。 
3日目 (ババ平から上高地)
| 縦走路から槍ヶ岳 
  | 上高地から前穂高 
  | 
 3日目も、真夜中にまわりがうるさくなってきたので、起きだす。
 外を見ると、幸運なことに、今日もまた天の川と満天の星空。
 食事をしてからすぐに撤収にかかり、星明かりのなか出発。
 岩場がなく、ゆるい下りなのでどんどん下れる。
 横尾から先はなかば観光地。
 おおぜいの人が歩いていた。
 右手に見える前穂がすばらしい。
 徳沢まで来ると、自動車も走ってくる。
 暑い陽射しが照りつけ、観光客がうろうろする中、やや疲れてきた。
 橋を渡って明神の方に行ってみる。
 明神池見物料200円とあるので、金をはらって入ってみたが、カモが泳ぐ普通の池だった。
 河童橋から、上高地温泉ホテルまで足を伸ばしたが、「外来者歓迎」の看板に反して、入浴は午後からだといわれた。
 がっかりして河童橋に戻り、バスターミナルに向かう。
 この一角にあったコインシャワーで3日間の汗を流し、人心地ついた。