大菩薩山塊で峠めぐり

−上日川峠・丸川峠・寺尾峠・六本木峠・柳沢峠・板橋峠・白沢峠−

【年月日】

2012年5月4〜5日
【同行者】 単独
【タイム】

5/4  上日川峠(10:05)−大菩薩嶺(11:20)−丸川荘(12:20)
5/5  丸川荘(6:20)−寺尾峠(6:53)−六本木峠−(7:44)−柳沢峠(8:21)
   −柳沢ノ頭(8:53-9:17)−ハンゼの頭(9:30)−板橋峠(10:19)
   −倉掛山(11:31-11:38)−白沢峠(12:20)−白沢峠入口(13:51)

【地形図】 大菩薩峠、柳沢峠 ルート地図

一日目(上日川峠〜丸川荘)

 雨があがる予報だったので出かけてきたのだが、雁坂トンネルを抜けても、雨脚はむしろ、強くなった。
 芹沢入口バス停付近には思わしい駐車スペースがなかったので、白沢峠入口より少し北の広くなったところに軽トラをとめる。
 傘を持ってこなかったので、合羽を着て、バスの予定時刻に合わせて歩き始めた。
 このバスは遅れがちに来ることが多いのだが、この日はあまり遅れずに来てくれたので、あまり濡れなくてすんだ。

ガスが晴れた一瞬(雷岩近く)
バイカオウレン1

 山梨市営バスで、山梨市駅へ。
 甲斐大和までジェイ・アールに乗り、甲斐大和から栄和交通(甲州市委託)の登山バスで上日川峠まで行く。
 もちろん季節運行だが、とてもありがたいバスである。

 上日川峠は、たいへんな数のマイカーであふれかえっていた。
 雨はとりあえずやんだが、ザックカバーはつけておいたほうがよさそうな雲行きだった。
 ハイカーの群れを抜け、ぬかるみを嫌って、福ちゃん荘への車道を行く。

 福ちゃん荘から先も、あまり傾斜がなく、らくな登りが続く。
 密生したミヤコザサの下生えのカラマツ林は、まだまったく芽吹いていなかった。
 雷岩への急登にかかれば展望が開けるはずだが、ずっとガスの中で、尾根にあがる手前で一瞬、ガスが切れただけだった。

ガスのコメツガ林
苔むす森1

 雷岩から先は、ぬかるみに気を使いながら、大菩薩嶺へ。
 ここは休むほどのところでないので、先へ向かう。
 おりしも、雷鳴が轟いたので降りだすかと思ったが、幸い雨にはならなかった。

 大菩薩嶺から丸川峠へは、苔むしたコメツガ林の中のゆるやかに下っていく、風情のよいところだ。
 残雪はほとんどなく、持ってきた軽アイゼンは使わなかった。
 足元には、バイカオウレンも咲いていた。
 ガスの日も、降ってさえいなければ、森の中は十分気持ちよいし、楽しむことができる。

 写真を撮りながら下って行くと、花を閉じたヒメイチゲが点在するようになり、7年ぶりの丸川峠に着いた。
 ガスも晴れて日差しが出てき、うららかな初夏の陽気という雰囲気になった。

 ずっと休まず来たので、小屋前のベンチでザックを下ろす。
 大型連休中とあって、通る人は多く、小屋わきの大石に腰掛けて休んでいる人が多かった。
 丸川荘で受付をお願いしたが、宿泊予定者はその時点で自分だけだった。

バイカオウレン2(大きな写真)
春浅い丸川峠

 ザックを小屋に入れさせてもらい、ベンチで読書。
 山小屋に泊まって、こういう登山もいいものだと思ったが、これはのどかな丸川荘だからできることだとも言えた。

 空気がやや冷たくなったと思ったら雨が降り始めたので、小屋に入ったら、空が暗くなり、大降りの雨になった。
 ストーブにあたりながら小屋番の方と談笑していたら、かなり濡れた宿泊予定者が到着し、さらに通りすがりの登山者が飛び込んできた。

 おりしも、直径1センチくらいの雹が激しく降ってきて小屋の屋根を叩き始めた。
 珍しいので、ちょっと外に出てみたが、雹が頭に当たるとかなり痛いということがわかった。

降雹
とてもいい雰囲気の丸川荘

 通りすがりの女性たちは、大菩薩嶺を越えて福ちゃん荘まで行く予定らしかったが、雨宿りしているうちに時間的に厳しくなったため、裂石へ下山していった。
 その後、宿泊予定の中高年4人パーティがずぶ濡れになって到着し、宿泊予定者が揃った。

 日が暮れると、ランプに灯が入り、いい感じになったが、あとから入ってきた4人組が圧倒的に賑やかで、ちょっと居場所がなかった。
 夜は快適に眠れた。

二日目(丸川荘〜白沢峠入口)

丸川峠からの富士山(大きな写真)
苔むす森2(大きな写真)

 明るくなってから外に出てみると、笠をかぶった富士山が見えていた。
 風がやや吹いていたが、まずまずよい天気だった。

 朝食をいただいたあと、他の同宿者はまったりしていたが、先が長いので、早々に出発した。
 前の日に降った雹もほとんど溶けて、足元もずいぶんよくなっていた。

 丸川峠から六本木峠にかけては、おおむねコメツガの樹林帯だが、苔むした深山的雰囲気のところが随所にあって、味わい深い。
 ことにこの時期は、バイカオウレンやヒメイチゲが可憐に咲いているので、地味な森が華やいだ感じになる。
 とはいえ、朝早いこともあって、ヒメイチゲはやはり、ほとんど咲いていなかった。

林床の苔1(大きな写真)
林床の苔2(大きな写真)

林床の苔3(大きな写真)
ヒメイチゲ(大きな写真)

 六本木峠まで来ると、一転して、ブナやミズナラの多い、明るい森となる。
 巨木はないから、原生林ではないようだ。
 道は平坦で、森林軌道のあとのような感じだ。

 水場では、ハシリドコロがようやく、顔を出したところだった。
 ササとブナの森を抜けると、エンジン音のうるさい柳沢峠に着いた。
 この国の人間はどうして、自動販売機でものを買う時にも、エンジンを止めないのだろう。

 ここでは立ち止まらず、柳沢ノ頭へ登っていく。
 まだ芽吹いていないカラマツ林なので、明るいところだ。
 樹林越しに富士山が見えるので、雲に隠れないうちに展望地に着きたいと、ちょっと焦りもある。

 しかし、寒気が入っていても、地表が温まる前の午前中は安定していることが多い。
 柳沢ノ頭では、期待に違わぬ富士山と南アルプスの大観を目にすることができた。

柳沢ノ頭から富士山(大きな写真)
バッコヤナギ咲く

 ここまで休まず来たので、ここで大休止。
 ラーメンを食べていたら、このコースで唯一出会った老夫婦が通り過ぎていった。

 春は野鳥の姿を見ることも多い。
 この時も、ヒガラかコガラが、すぐそばまで来て飛び回っていた。  ゆるやかに下ると、鈴庫山分岐にトイレ付きの立派なあずま屋があった。
 このあたり、分岐がたくさんあって、ちょっとわかりにくいが、そのすぐ上がハンゼの頭で、ここも好展望だった。
 ここからは、南アルプスがほぼ全山、見渡せた。

 レンゲツツジが咲けばみごとだろうと思われる草原状のところをしばらく行くと、電波塔があって、登山道がまたわからなくなる。
 笠取林道へという方に入りかけたが、尾根からどんどん外れていきそうなので、思い直して電波塔に登ってみると、登山道が見つかった。

 しばらくの間、草原状で傾斜もほとんどなく、西から南側はしばしば開けて展望が得られる。
 藤谷ノ頭あたりから尾根の丹波川側は防火帯となり、展望は開けるのだが、ちょっと風情のない道となる。
 防火帯は結局、白沢峠まで断続的に続いていた。

黒川鶏冠山
飛竜山

マルバダケブキの芽生え
木賊山と破不山

 板橋峠を過ぎると、さすがに初夏らしく、暑くなる時間にさしかかる。
 直射日光の注ぐ防火帯歩きは、ちょっと閉口させられたが、国師ヶ岳から飛竜山にかけての奥秩父や黒川鶏冠山、大菩薩連嶺などが見渡せて、よいところではあったが、花はほとんどなく、マルバダケブキの芽生えが至るところに出ているのみだった。

 ほぼ全体がカラマツに覆われた倉掛山の登りはかなりきつかったので、小休止とした。
 ここまで来れば、白沢峠まできつい登りはないので、やれやれだった。

 防火帯が切れた登山道を下って行くと、北に向かうべき道が南へ向かい始めた。
 地図をよく見ればこれで間違っていないのだが、あらぬ方向に下ってバカを見るのは勘弁なので、北へ登り返し、かすかな踏みあとを見つけて再び防火帯に出た。
 トラックの残骸のある白沢峠まではすぐだった。

白沢峠
ミツバツツジ

 峠はきちんと十字路になっており、三富村芹沢から一之瀬高橋への道が越えていた。
 直進すれば、石保戸山からの道を合わせて、雁峠に至るとある。
 本日の尾根歩きはここまでなので、三富方面へ下る。

 ここまで極端に広い防火帯を歩いてきたのだが、ここからしばらくは、部分的に釣り人の歩く踏みあと程度の道となる。
 高度を下げるに従って、早春から初夏へと季節が進み、ジグザグに急降下するあたりではミツバツツジがちょうど見ごろだった。

ハナネコノメ(大きな写真)
ツルネコノメ(大きな写真)

 沢音が近づき、小沢を渡ると、まだ咲き残っていたハナネコノメやツルネコノメ、イワボタンなどを見る。
 ハシリドコロはちょうど、盛んに咲いているところだった。

 白沢は、その名のとおり、かこう岩のナメ沢で、随所に滝をかけたきれいな沢だった。
 ただ、堰堤があまりに多く、上流部にイワナがいる気配は全くなかった。

白沢のナメ滝
すみれ

 荒れた林道に入ってからは、滝見物に道草しながら下った。
 国道近くから山腹を見上げると、鮮やかな新緑の中に山桜がちょうど満開で、そういえば牛の寝通りや長峰から下ってきた時も、山笑う新緑が美しかったと思いだした。