展望の峰から峰へ
−早春の小金沢連嶺−

【年月日】

2006年3月4〜5日
【同行者】 単独
【タイム】

3/4 裂石(6:37)−上日川峠(8:20)−石丸峠(10:08)−
   小金沢山(11:35-11:42)−牛奥ノ雁ヶ腹摺山(12:23-12:30)
   −川胡桃沢ノ頭(13:10)−黒岳(13:40)−白谷ヶ丸(13:55)
   −湯ノ沢峠(14:22)
3/5 湯ノ沢峠(6:25)−大蔵高丸(7:04)−破魔射場丸(7:40-7:50)
   米背負のタル(8:48)−大谷ヶ丸(9:11-9:26)−鎮西ヶ池(10:20)
   −滝子山(10:30-10:55)−桧平(11:22)−水場(11:58)
   −初狩駅(13:20)

【地形図】 大菩薩峠、笹子、大月 ルート地図

石丸峠から見た富士
灌木の枝についた氷

一日目(裂石〜湯ノ沢峠避難小屋)

 裂石から上日川峠に行く林道のゲートが閉まっているので、自動車の通りは皆無。
 ゲート前に小型バスが止まってアイドリングしているから、団体さんが先行しているらしい。

 登山道に入ると、長い霜柱ができていて、踏むのが惜しい。
 まわりは冬同然の景色だが、シジュウカラがさかんに鳴き交わしているのが、春らしい。

 第一展望台からは冠雪した南アルプスが見える。
 天気がよいので早く稜線に立ちたい。

 ブナ・ミズナラの疎林にモミが混じる美しい樹林帯では、キツツキのドラミングがあちこちで響いていた。
 ミズナラの大木が数本あって、目を引く。
 大菩薩のブナ林という看板があったが、ブナの大木は見られなかった。

 上日川峠で、団体さんを追い抜かせてもらい、石丸峠への道に入る。
 ここからはトレースがなく、新雪を踏んで歩く。

 細い沢を3本渡ると小屋平。
 ダム北岸へという道標を始め、以前来たときにはなかった人工物が目につく。

 林道を渡ると雪のついたササの中の道になり、傾斜が出てくるので、カッパズボンと軽アイゼンをはく。
 石丸峠手前の丈の低いササ帯では、数頭の鹿が遊んでいたが、お花畑がどうなるか、心配なところだ。
 峠が近くなると南が開け、期待に違わぬ極上の富士山が迎えてくれた。
 広いササ原では、軽く雪が乗って、とても美しい。
 灌木の枝先には氷がついてキラキラ光っており、かなたには白い南アルプスがずらりと並んでいた。

石丸峠から見た南アルプス
湯ノ沢峠避難小屋

 峠からは北面の登りになるので雪がやや深くなる。
 小ピークを登って牛ノ寝通り分岐を過ぎると狼平。
 ここから小金沢山への登りで、もっとも雪が深くて、20センチ程度。

 針葉樹に被われた小金沢山はおおむね頂稜の西側のトラバースなのだが、雪のため多少わかりにくいところもあったものの、ほぼ夏道通し行けた。

 小金沢山のピークで小休止。ここまでほとんど休まなかったので、やや疲れた。
 富士山の裾から雲が上がってきて展望はやや悪くなってきた。
 また奥多摩から大月方面にかけても雲が押し寄せてきていたが、天気が崩れそうな感じではなかった。

 牛奥ノ雁ヶ腹摺山まで来ると南アルプスも富士山も春霞に隠れて見えなくなった。
 目の前には黒木に被われた堂々たる黒岳。
 東にはやはり黒木の多い雁ヶ腹摺山。こちらは小さい山なので迫力には欠ける。

 下りきるとサイノ河原。
 ちょっとした広場は、冬ならテントが張れそうな感じ。水場の表示もある。
 東に見える山は三頭山か。西は甲斐駒ヶ岳まで見えている。

 カラマツ林を登りつめると川胡桃沢ノ頭で、ここはもう黒岳頂稜の一角。
 このあたりも雪がやや深かった。

 黒岳はコメツガの樹林に囲まれた静かなピーク。
 大展望もよいが、このような落ち着いたピークも悪くない。

 次の白谷ヶ丸はかこう岩のザレの著しい、三つのピーク。
 展望が開けて金峰山、八ヶ岳、甲斐駒などが見える。
 南側は霞の中。

 すべりやすい道を急降下していくと湯ノ沢峠。
 今夜の泊まり場となる避難小屋をのぞくと、誰もいなかった。

 裂石からここまで約8時間。
 積雪のため歩くスピードは遅くなったが、大休止しなかったのでまずまず予定通りに宿に着けた。

 まずは水の確保。水場は小屋から至近距離にあって、細いながらもしっかりした水流。
 室内にはフトンが積んであったが、あとで聞いた話によると自動車でここまで乗りつける人が小屋に捨てていくのだそうだ。
 冷たく湿気っぽいので、もちろん使いたくない。

 新築の真新しいトイレが広い駐車場の一角に建っているが冬季は使用禁止で施錠中。
 ゲートが開いたらこの駐車場には夜明け前からたくさんの自動車が来てアイドリングするので、騒音と排気ガスで眠れたものではないそうだ。
 せっかくのお花畑に悪影響も甚だしいだろうに、どうしてここまでマイカー族を入れてやる必要があるのだろうか。

 二食分の食事をして酒を飲んでいたらもう一人のハイカーが来て、今夜の客は二人となった。
 前夜あまり寝ていなかったので、世間話をしているうちに眠ってしまった。

大蔵高丸から見た朝の富士
滝子山から見た富士

二日目(湯ノ沢峠避難小屋〜初狩駅)

 ここは山を撮る人が集まるところらしく、夜中の4時前から何人かのカメラマンが小屋の戸を開けた。
 こちらがシュラフから出たのは5時過ぎ。
 朝の室内気温は氷点下5度と、標高のわりには暖かかったが、枕元に置いたペットボトルは凍ってしまった。

 シュラフに入れておいた水で食事を作り、小屋を出るとうれしいことに今日も快晴。
 すぐ南の丘からは、南アルプス全山、八ヶ岳、奥秩父などが鮮やかに望まれた。

 40分ほどで大蔵高丸。
 ここはすばらしい富士山の展望台で、三つ峠山の向こうに巨大な富士山がそびえていた。
 奥多摩側は墨絵のようなシルエット。

 緩く登下降していくと破魔射場丸。
 疎林の中の感じのよいところだ。
 丹沢や道志もシルエット状に見える。

 少し下り、ズミとノイバラの林の中、天下石などの小ピークを越えていくと米背負のタル。
 大蔵沢林道への分岐という道標が建っている。

 このあたりはずっと疎林。明るい林の中で野鳥のさえずりが聞こえた。
 シジュウカラがもっとも多く、クロジやウソのさえずりも聞こえる。
 早春とあって、さえずっているシジュウカラはあまりおらず、地鳴きやヅィーッという警戒音を発しているのが多い。

 大谷ヶ丸はカラマツ・アカマツの生えたピーク。
 ここまで来ると里山らしい風情となる。
 南西側が伐開されていて、南アルプス、八ヶ岳、北アルプスの一部までが見えていた。

 ここでひといき入れ、滝子山への尾根に入る。
 このあたりはおおむねカラマツの植林だが、モミを伐らずに残したらしくモミとカラマツの混生林だ。
 シジュウカラの密度はこのあたりが一番濃く、鳴き声もかしましかった。
 葉の落ちたこの季節は見通しがよいので、時間があれば望遠レンズでじっくり鳥の撮影などやってみたいくらいだ。

 鎮西ヶ池を過ぎると、滝子山への登り。
 かなり急だが、東側から巻き登るようになっている。

 滝子山は展望に恵まれた今回の山行のフィナーレにふさわしく、大展望。
 南東に見えるのは丹沢・道志。近いところでは御正体、杓子山が特徴的だ。
 正面は富士、三つ峠、鶴ヶ鳥屋山、御坂の山々。
 南西は悪沢・赤石・聖岳。
 北東は大岳山、三頭山。すぐ東は扇山、権現山。

 あとは下るだけなのでここはゆっくり休んだ。

マツカサキノコモドキ
藤沢集落手前で見たテングチョウ

 下りは、桧平の尾根をとる。
 地形図にあるとおり急激に下り、男坂と女坂の分岐で軽アイゼンをはずす。

 桧平はちょっと平坦なところで南側が開けているが、目が奢っているのであまり感動なし。
 一帯はイノシシのヌタ場らしく、至るところで土が掘り起こされていた。

 標高1100メートル付近で、ヒノキの植えられた北側の谷へ下る。
 最後の水場からはほぼ川通し。
 ハナネコノメが咲いていてもおかしくない季節なのだが、川には花が見あたらなかった。

 アカマツまじりの雑木林でマツカサキノコモドキが出ているのを発見。
 マクロコンバータレンズをつけてこれを撮影。
 いちいち装着するのとスイバル式でないため這いつくばらなければならないのは面倒だが、きれいな写真が撮れた。
 ここでカッパズボンとスパッツもはずす。

 藤沢集落近くの路傍ですばしこく飛ぶテングチョウを発見。
 小枝に止まってじっとしていてくれたので、手持ちでもまずまずの写真が撮れたのでとてもうれしかった。

 初狩から電車とバスで裂石に戻り、自動車を回収した。