巨木の森を彷徨する
−菅名岳から大蔵山周回−

【年月日】

2008年10月12日
【同行者】 単独
【タイム】

駐車場(8:00)−胴腹清水(9:43)−巨トチ(10:23)
椿平(10:37)−菅名岳(11:30)−大蔵山(12:20)
6合目(12:45)−3合目(13:21)−駐車場(14:10)

【地形図】 村松、馬下 ルート地図

 好天予報だったので、以前から行ってみたかった菅名岳に出かけた。

 アプローチが長いので、自宅を午前1時に出て関越道を走った。
 栄SAで仮眠をとり、一般道は道中不案内のため、磐越道安田インターまで走って一般道に下りた。
 登山口の駐車場には、すでに10台ほどの自動車が止まっていた。

カツラの森
カツラ巨木1(大きな写真)

 登山口までは10分ほどの林道歩き。
 山側はよく手入れがされており、まるで教科書のように立派なスギ林だ。

 登山口には大まかな地図看板が立てられている。
 まずは林道をさらに歩いて、胴腹清水へ向かう。

 道標らしきものがあまり見あたらないので、やや心配にもなるが、林道の終点まで行くと、どっぱら清水への道標があった。
 沢沿いの登山道には山ヒルが生息しているらしいので、最初はかなり注意深く歩いたが、さすがにこの時期になるとヒルの姿も見えなかったので、安心してゆっくり歩くことができた。

 ブナやトチの倒木がないのできのこは少なめだったが、ケヤキの枯れ木に新鮮なエノキタケが出ているのが見つかった。
 登山者はみな、大蔵山から登っているのか、こちらのコースに人影はなく、のんびり登ることができてよかった。

 しばらく行くと、サワグルミやカツラの森。
 大きなサワグルミもあったが、この森の見どころは、なんといっても巨大なカツラが林立しているところだった。

カツラ巨木2(大きな写真)
カツラ巨木3(大きな写真)

 樹木の性質上、株立ちの樹だから幹の太さは、さほどでない。
 しかし、数本の幹を立てた大株になると、根回りの大きさは尋常でない。
 一度主幹が枯れたのち、伸びたひこばえが巨大化したらしき株もあり、苔むした枯株から元気のよい幹を立てているのもあった。
 沢沿いを歩けば、大きなカツラを見ることはしばしばあるのだが、相当範囲に巨カツラがそびえ並ぶところを見たのは初めてだった。

 かなり歩いて胴腹清水。
 この清水は、登山道から分岐する枝道を少し登ったところにあり、岩の割れ目から大量の水が噴き出しているのだった。
 清水近くには大カツラや大トチがある。
 胴腹清水よりやや上流側の斜面にあったトチ(下の巨トチ1)は、かなり大きなもので、あとで見た巨トチと比べても遜色のない巨木だった。

 道が沢から離れるところに巨トチへの道標があり、しばらく登ると、枝ぶりも素晴らしい巨木(下の巨トチ2)に会うことができた。
 巨木の谷の親分らしい風格のある、神々しい樹で、数百年を生きてきた生命と時間・空間を共にする意味を考えながら、しばしそこで立ちすくむ。

巨トチ1(大きな写真)
巨トチ2(大きな写真)

 椿平へはブナ林の急登だが、あっという間だ。
 丸山尾根に上がれば、林相が一変して、ヤブツバキの下生えにブナの大木ばかりとなる。

 ここからの登りはほぼずっとブナ林。
 ブナの根が覆う尾根を登っていくと、地面から出るきのこが目に入るが、両側はかなりの急斜面なので、倒木や立ち枯れは見あたらない。

ブナの根(大きな写真)
ブナの道(大きな写真)

 思ったより時間がかかってようやく、菅名岳。
 雲がやや多く、飯豊ははっきりしないが、東〜南側が切り開かれている。
 いかにも地元の人らしいハイカーが数パーティ、敷物を広げた上で憩っていた。
 ナナカマドの紅葉は今ひとつだったが、赤い実が青空に映えていた。

 山頂から大蔵山に向かう尾根は、伐採あとかと思える灌木帯。
 粟ヶ岳と白山以外は名前のわからない山並みが続き、好展望だが、重厚な樹林帯を歩いてきた目には物足りない。

 灌木帯は、大蔵山まで続く。
 尾根の木々の紅葉も今ひとつで、ミネカエデやヤマウルシがいくらか色づいていた程度だった。

 大蔵山からは越後平野が日本海まで一望できる。
 菅名岳の全容も見渡せるのだが、丸山尾根一帯のブナ原生林がみごとだ。

ヤマウルシ紅葉
ミネカエデ黄葉

 大蔵山から下山路に入ると、しばらくして再びブナ林となる。
 8合目あたりからは大木も多くなり、なかなか見応えがあった。

 いつか伐採したあとなのか、太い倒木は見つからなかったが、苔むした立ち枯れに、ナメコが出ているのが見つかった。
 その少し下では、ちょうどよいタイミングのナラタケが群生していた。
 傾斜のひどくないところを丹念に探せば、きのこがもっと見つかりそうだったが、この日のうちに帰宅するつもりだったので、登山道の周辺だけを見て歩いた。

 やがて階段コースと急坂・沢コースの分岐。
 ここは、急坂・沢コースに入る。

 さらに下ると急坂コースと沢コースの分岐。
 赤土の道が滑りやすくて辟易していたので、ここは沢コース。

ナメコ(大きな写真)
ナラタケ(大きな写真)

 いくらか荒れたところもあったが、大木は見あたらないものの、トチやカツラが再び姿を見せる。
 このあたり、登山道にはトチの実がびっしり落ちていた。

 林道に出ると、ススキがたなびき、ノコンギクが乱れ咲く。
 ナギナタコウジュ・カメバヒキオコシなどが道ばたを彩っていた。

切畑観音堂の乳銀杏(大きな写真)
館ノ内の大杉(大きな写真)

 めったに訪れる機会のない町なので、下山後、五泉市の大木を見学していった。

 まずは、菅名岳登山口に近い切畑観音堂の乳銀杏。
 樹の前に鳥居と小さな祠があったが、この樹が信仰の対象になっているらしかった。
 過日、秋田で見た大銀杏に引けを取らない、巨大な銀杏に拝礼していった。

 次に、巻潟東インターへの道中にあるらしい館ノ内の大杉に向かった。
 この大杉は、五泉市森林公園入口近くの人家裏にあった。

 砦のような地形のてっぺんに、神社と大杉があるのだった。
 スギというと、枝をきれいに払われた建築材用のスギ植林地を思い浮かべるが、スギの古木はどれも、太い大枝をくねらせるようにそびえおり、まことに迫力がある。
 この大杉もまた、そのような立派なスギだった。