花の妙高にあそぶ

 【年月日】  1992年7月23〜24日
 【パーティ】  単独
 【タイム】  7/23 燕温泉(9:35)−麻平(10:17)−黄金清水(11:45)−黒沢池(1:30)
          −高谷池(2:25)−火打山(4:20)−高谷池(5:35)
        7/24 高谷池(7:50)−黒沢池(9:00)−長助池分岐(10:05)−妙高山
          (11:18)−光善寺池(12:55)−燕温泉(3:49)
 【地形図】 赤倉、妙高山、湯川内

黒沢湿原
一日目(燕〜高谷池)

 朝なにも食べずに家を出たので、燕の駐車場で腹ごしらえをし、燕温泉の温泉街を歩き始めたのは9時半すぎ。

 つり橋をわたり、いよいよ山道になるところの橋の下に野天風呂があり、帰りの楽しみ。

 そこから先には惣滝という観光名所があり、まだ観光客が多い。
 惣滝分岐という地点を過ぎてからいよいよ妙高への登り。

 テントをやや軽いのに代えたし夏山なので、ザックの重さはたいしたことはないのだが、ハードワークの疲れが十分とれていないと見え、足がちっともあがらない。
 40分ほども登ると、麻平という道標の建つ三叉路。ここでまず一息入れた。

 麻平からは山腹の小さな登り下り。花といえばギンリョウソウくらい。
 ホトトギスの鳴き声がひびく中を歩いていくと、何人かの登山者とすれちがった。地下足袋をはいている人が多いのはどうしてだろうか。

 しばらくで大倉沢を渡渉するところ。橋は架かっていないがロープが渡してある。このあたりではミソサザイの明るい鳴き声を聞いた。

 ここから道は北側の稜線へとトラバースしながら登っていく。まっすぐ登るわけではないから道の傾斜はたいしたことはないが、一か月ぶりの山行なのでかなりこたえた。
 トリアシショウマ、カラマツソウ、ノウゴウイチゴ、ズダヤクシュ、オオバミゾホオズキなどが咲いており、気がまぎれるのでありがたい。
 かなりバテたところで11時すぎ。岩が休んでけというのでザックをおろした。

 稜線がずいぶん近くなってきたことが感じられるころ、登山道の右手にいきなりミズバショウの群落。もっとも葉ばかりだが。
 そのすぐ先が黄金清水の水場だった。

 ゴミが落ちていてあまりいい感じはしなかったが、水はとても冷たい湧き水だった。すぐわきに何本かのナラタケが生えていたのでいただいた。
 このあたりからヤグルマソウやキヌガサソウの花も見られだした。オオバミゾホオズキのちょっとした群落がいっせいに開花しているようすは、なかなかみごとだった。
 ナラタケはその先にも少し生えていた。 

 この分岐からは黒沢池のほうへ短いが急な登り。ネマガリタケの食べられそうなのがあったので、少し摘んでいった。
 ササの中にサンカヨウの花が見られるようになると、ようやく楽しくなってきた。
 上越の里山では5月に咲くタニウツギはこのときちょうど満開だった。
 急登20分ほどで待望の稜線に出た。

 ここからはクルマユリ、コキンレイカ、ツマトリソウ、ベニバナイチヤクソウ、ハクサンチドリ、テガタチドリなどが咲く気持ちのよい尾根歩き。
 妙高の尾根にはダケカンバが多い。なかにはかなりの大木もある。ダケカンバの樹林を入ったり出たりするのだが、バテた体にはここの登りもきつく、途中で一息いれた。

 二千メートルを少しこえたピークから黒沢ヒュッテまでのトラバース道はとても楽しいところだ。北面のため陽があたらないし、ところどころに残雪も残っているので涼しい。小沢を過ぎるとサンカヨウはますます多くなり、マイヅルソウ、ゴゼンタチバナ、ツマトリソウ、ユキザサ、イワカガミなども見られた。
 ツマトリソウが星の形の花をたくさんつけているようすもなかなかみごとだ。ショウジョウバカマも変色しかけているがまだ残っていた。そして、ちょっとした雪渓を渡ったところには、ハクサンコザクラの大群落。ついでシラネアオイの花があらわれた。
 ガスっていたが、その中に浮かぶハクサンコザクラはとてもすばらしかった。
 前方が開けると気持ちのよい草原のすみに建つ黒沢ヒュッテに着いた。

 かなりバテてはいたが、歩き始めてからまだ4時間。黒沢ヒュッテではあまりゆっくりせず、高谷池ヒュッテへと歩を進めた。
 登山道が左に下るようになると三角屋根が見えてき、高谷池湿原。キヌガサソウの群落がいっせいに花を開いており、ベニバナイチゴも美しい花を開いていた。そこから高谷池ヒュッテまではすぐだった。

 高谷池のテント場は湿原のへりにあり、水場も近くて上等のテント場。まわりにミヤマキンバイやハクサンコザクラ、ノウゴウイチゴが咲いており、とてもきれいだ。テントを張ってナラタケ入りタケノコうどんを食べると、3時すぎ。
 小屋番の人に火打山までの行程を聞くと往復3時間とのことだったので、どうにか明るいうちに戻り着けると思い、飲み物と雨具だけを持って火打山に向かった。

 高谷池湿原からゆるやかに登ると、天狗の庭。
 木道のわきに大きな石がごろごろしていて、残雪がとけたところからハクサンコザクラ、ツガザクラ、アオノツガザクラ、イワイチョウ、イワカガミなど咲いていた。
 小さな池のようなところにはミズバショウもまだ咲いていた。湿原を横切ると火打山の登り。

 ムカゴトラノオ、ヤマオダマキ、オタカラコウ、テガタチドリ、カラマツソウ、ツマトリソウ、タニキキョウ、クルマユリなどが咲いている。空身なのでずいぶん楽。メボソムシクイの鳴く声が響く。チリチリいっているのはイワヒバリだろうか。
 右側の鬼ヶ城の岩壁がすごい。
 ところどころに出てくる残雪の切れたところにはコバイケイソウ、イワカガミ、サンカヨウ、ネバリノギランなどが咲く。標高二三○○メートルを越えたあたりから最後の登り。
 木の階段が設けてあるところを急登していく。このあたりには、イワカガミとミヤマキンポウゲが多い。
 ハクサンチドリやハクサンコザクラ、ウサギギクも咲いていた。

 頂上直下の雪田をキックステップで登り、最後の急登をこなすとやっと火打山の山頂。
 ガスのためまわりの展望は皆無だが、一部には青空も。この天気ならまあまあかな。
 火山なので、頂稜はもっと荒涼とした雰囲気なのかと思っていたが、山頂直下まで樹林帯だったちょっと意外。
 片道1時間10分で登ってきたので時間も十分。だれもいない山頂でくつろいだ。

 天狗の庭まで下ったころガスが晴れ、火打山、影火打、焼山がほの見えた。

 テント場はさっきより少しにぎやかになったとはいえ、宴会などはだれもやっていないので、ありがたい。
 6時半ごろにはほぼ快晴となり、久しぶりに晴れた山を見た。7時ごろの日没とともに眠った。

二日目(高谷池〜燕)

 夜が明けて外を見るとガスがおりていた。6時ごろいったん快晴になったが、またすぐにガス。
 気圧はやや下降気味なので前線でも通過中なのだろうか。
 7時ごろになってぱらぱらと雨が降ってきた。夜にもときどき弱い雨が降っていたが、この時の雨がいちばん強かった。近くで「テントをたたんでから雨が降ってくるなよ〜!」とののしる声が聞こえた。

 雨はすぐにあがったので、いっきにテントをたたみ、8時前に出発。

 今日は、富士見平まで南下して黒沢湿原を縦断するルートで黒沢池に向かった。

 ほとんど平坦ななか、ゆるやかに下っていく。
 中学生の林間学校登山隊とすれちがう。「こんにちは」のあいさつがわずらわしい。
 火打山から焼山が今日は快晴。
 30分ほどで富士見平につき、さらに黒沢湿原へ。
 このあたりにはオオシラビソの大木が多いが、雷撃によると思われる倒木がかなりあった。

 黒沢湿原は爽快この上ないところだ。ハクサンチドリ、ハクサンフウロ、カラマツソウ、ツマトリソウ、ワタスゲ、チングルマの種子、イワイチョウ、コバイケイソウなどの群落が点々。なかでもワタスゲ群落はとてもきれいだった。

 9時に黒沢ヒュッテ。ここからは展望のないなか大倉乗越に向かっての急登。
 さらに大倉乗越から外輪山と妙高山との鞍部に向かって急降下。

 鞍部は雪渓の末端になっており、水が流れていた。ここで一息いれ、雪渓を登る。
 雪渓の消えたところにはユキザサの芽やハリブキやネマガリタケが出ていたので、それらをすこし摘んだ。
 雪渓が終わると標高差400メートルの強烈な登り。
 火打と同様、ここも山頂近くまで樹林におおわれていた。ひたすらがまんでようやく妙高山の三角点。南の岩のごろごろしているところの方が少し高い。風があるので岩陰で食事。

 その後下山するだけだが、うんざりするほどの急降下。
 はじめは硫黄のにおいがたちこめる石だらけのところ。すぐに高校生の林間学校登山隊に追いついたが、なかなか追い抜かせてもらえない。
 鎖場で女子生徒が「ヤダー」と言っている間に追い越すことができた。
 風穴、光善寺池、天狗堂、胸突き八丁などという地点を過ぎ、ようやく北地獄谷の沢。

 ここの水は砂糖の入っていないポカリスエットのようなへんな味がしたので飲まずにパス。
 その先、血の池の上あたりで、真水の流れる小沢を見つけることができ、のどをうるおすことができた。
 尾根の上から称名の滝・光明の滝が見えたが、光明の滝は70メートルはありそうなすごい滝で一見の価値ありだった。

 ブナがめだつようになり、ヒガラのさえずりが聞こえてくると、早く麻平に着かないか気がせいてしまう。
 燕温泉では、登るときに見つけておいた河原の湯という野天風呂の、白い湯ぶねがとても気持ちよかったので、30分近くそこにつかっていた。