雪田にルートを拾いながら
- 守門岳 -

  【年月日】 1992年5月25日
  【同行者】 単独
  【タイム】 大白川登山口(7:00)−雪田(8:37)−守門岳<(9:21)−大白川登山口(11:26)
  【地形図】 守門岳

守門岳

浅草岳から

 登山口に着いたのは7時前。
 ガスがたれこめていて山は全然見えない。雨も絶えまなく降りつづいていた。  普通だったら登る気にはならないところだが、ここまで来て登らないのは惜しいので、すぐに雨具を着こみ、登りはじめた。

 今年はどうも夏のくるのが早いようだ。
 登山道の近くのコシアブラはもうすっかり葉を広げてしまっている。布引の滝の近くにはシオデなどもあったはずだが、登山道のあたりには見えなかった。
 ほかの山菜類も全然なし。
 ブナの木が多く、かなりの巨木が一本あった。

 雨のなか、ツツドリ、アカハラ、カッコウ、ホトトギスなど、鳥の鳴声だけが響きわたっている。
 尾根の上に出ても急登がつづく。
 ガスのため展望は皆無だが、イワカガミの花がずっと咲いていて、見るものには不自由しない。

 草花は岩場を右からトラバースするところにジュウニヒトエのような白い小花が咲いていた程度だが、色鮮やかなミツバツツジ、タムシバ、ムラサキヤシオ、ユキツバキ、オオカメノキなどが咲いていた。

 道のわきに残雪が見えるようになると、ショウジョウバカマの花がめだってき、イワカガミは姿を消す。咲く時期が微妙にずれているのである。

 傾斜がゆるくなると、沢の源頭の雪渓に出る。
 雪渓をわたって向こうの尾根の堅く締まった雪の上をキックステップで登る。
 傾斜がかなりあり、ブロックが落ちるのではないかという恐れも感じたので、ルートを外さないためにもなるべくヤブと雪の境目を通る。
 アイゼンがほしいくらいの急なところを登りきるとふたたび尾根の上に出、しばらく行くと田小屋コースからの登山道が見つかった。

 その上でまたルートがわからなくなったが、今にも落ちそうにひび割れている雪の上をストックを突きながらトラバースし、再び尾根の上に出た。
 その先は夏には小広い草原になるであろう雪田だった。

 高度計の数字からして、三ノ芝ピークの頂上近くにいることがわかったが、ガスが晴れそうにないので、万一に備えてメモ帳に雪田上のルートの見取り図を書きながらさらに登っていく。

 三ノ芝から少し下ると尾根がやせてき、ルートは迷いようがなくなるが、登山道が東側に張りだした雪庇に隠されているところがときどき出てきて、気分がよろしくない。

 雪庇もなくなり、尾根上の急登となると道端には、カタクリ、キクバオウレン、ツバメオモト、オオバキスミレ、イワナシなどの花が咲く。
 もっとも多いのはカタクリだ。
 浅草岳の山頂にもたくさん咲いていたが、ここ守門岳では登山道のまわり中カタクリの花だらけだ。

 森林限界を過ぎ、草原となってニッコウキスゲの芽だしが見えてくると傾斜がゆるみ、山頂に着いた。
 山頂には三角点と古いほこらが二基あった。
 まわりをさえぎるものはなにもないが、ガスのため真っ白で何も見えない。
 しばらく止んでいた雨がまたもや降りだし、風も冷たい。

 残念だがルートも心配なので、すぐに山頂を辞して下山にかかった。
 ガスは晴れなかったが、見取り図を書いたりしたのでルートファインディングにまったく問題はなかった。

 きたとおりに雪田を下り、雪渓をわたって登山道に出るとほっとして、猛烈な空腹を覚えた。
 少し下ったところにショウジョウバカマが点々と咲く平坦なところがあったので、そこで食事。
 下っていくと、下の方のガスが晴れてき、南は大白川のスキー場や林道、北は鮮やかな新緑に映える大雲沢の雪渓が光っていた。

 家へ帰るには早い時間だったので、破間川と左沢、右沢合流点の林道ゲートまで行き、今度は左沢で魚釣りをしたがちっとも釣れなかった。

 自動車のところに戻り、ゲート近くにできた「ニュー浅草岳温泉」なるものに入ってみた。
 今まではいつも「SLランド守門温泉」だったが、ニュー浅草岳温泉はトンネルのなかに湧いているという趣向で、新しい風呂だったので、まあまあよかった。