荒沢岳と未丈ヶ岳

 【年月日】  1989年7月9~10日
 【パーティ】 極楽蜻蛉と友人
 【タイム】  7/9 荒沢登山口(5:45)-退却地点(9:30)-登山口(12:05)
        7/10 ナキ沢(5:30)-未丈ヶ岳(8:50)-ナキ沢(12:05)
 【地形図】 銀山湖、平ヶ岳、大湯、未丈ヶ岳、八海山

前嵓

これを越えねばならない
 小出インターを下りると、思ったより天気は崩れておらず、シルバーラインからは残雪をまとった越後駒ケ岳が望まれた。

 取りつきは雑木林の中かなり急な登り。
 ここからは、駒ケ岳の雄姿がのぞまれる。中ノ岳の方が少し高いが、山のボリューム感は駒は駒ヶ岳が上。
 荒沢岳ははるかに高い。
 五葉松の大木がある、ゆるい登り下りの尾根をいくと、急登となり、鎖場。
 痩せ尾根を行くと、目の前に前クラのぎざぎざした岩峰がそびえたっており、なかなか威圧的。
 ここからは、左側へ下って岩峰の基部をトラバース。
 鎖にすがるが下が濡れたネマガリタケのためたいへん滑りやすくいやなところ。
 モウセンゴケやキンコウカなどが生えた草付のトラバースを終え、今度は失った高さに倍する岩登り。
 急登自体は苦しくてもなんとかがまんできるが、岩登りは、その緊張感と全身の体力を消耗するのとで、一気に疲れてしまう。

 岩場を終えるとまた痩せ尾根歩き。
 左俣沢源頭の雪渓から、滝が流れ落ちているのが近くに見える。
 荒沢岳への最後の登りは、三百メートル近い急登となる。その尾根がしだいに目の前に迫ってきたとき、雨が降りだした。
 少し立ちどまってみたが、雨はしだいに強くなり、われわれはレインウェアを着る。ここでこのあとどうするかをしばし相談。
 好天に向かう可能性がない上、雨のなかの前クラのトラバースはやばい。
 で、登頂を断念して引き返すことに決定。

 一気に下った。

 ここから自動車で未丈ヶ岳登山口へ。
 私はビールを飲んで、テントの中で昼寝、友人は黒又川本流に釣りに行った。

 5時前になり夕食の支度を始めていると、友人が帰ってきたが、釣果はなし。
 翌日の打ち合せをし、天気予報を聞いてお互いのテントで寝た。
 夜半に風雨が激しくなり、フライシートが飛ばないか心配なくらいで、とても翌日の登山は無理と思われる夜を明かした。

 3時に目は醒めたものの強い雨が降っていたのでまた寝てしまい、4時半頃、友人がテントをあけたりする音で目をさますと、雨は小止み模様になっていた。
 外へ出てみると、未丈ヶ岳が一応見えており、雲もいくぶん薄いように思われたので、予定どおりアタックと決めた。

 友人はまた黒又川で釣り。午後2時~3時に戻る約束でいっしょにスタート、三ツ又口で別れた。
 登山道は地元によって整備されたばかりらしく、ササや枝が伐り払われていた。
 取りつきはかなり急だが、ほどなく最初のコブの上に出る。
 カコウ岩のくずれた白っぽい砂の痩せ尾根だ。黒又川本流の左岸に岩場が切り立っているのが見える。雲はそれほどでもなく、やがて駒ヶ岳が望まれる。
 高度を上げると、駒ヶ岳から中ノ岳、さらに丹後山にかけての白い稜線、荒沢岳のコウモリのような姿がよく見えた。
未丈ヶ岳山頂下の雪田
 松ノ木ダオのピークの基部は少し下って滑りやすい斜面のトラバース。ここは慎重に通過。

 ここからは、一本調子の急な登り。
 稜線には松に代わってブナの大木があらわれる。1204メートルの三角点をみて、一段と登りがきつくなったように感じながら、ひたすら登っていくとササがあらわれ、飛び出したところが、山頂の一画であった。

 天気がよくないとはいえ、標高からは想像できない360度の大展望。越後三山とその周辺の山々、平ガ岳、燧ガ岳、日光連山、会津駒ケ岳、会津朝日岳、浅草岳に鬼ガ面山。
 それらが一望できた。

 また、山頂を反対側に少し下ったところは広大な頂上雪田となっており、スプーンカット状の雪田が広がっていた。
 雪田の周囲は雪が融けたばかりで、ニッコウキスゲやゼンマイ、コバイケイソウなどがようやく芽を出しはじめ、ショウジョウバカマの花がさかんに咲いていた。
 滑りやすい雪田をゆっくり下っていくと、下の方は雪が切れて草原状となっており、白いイチゲやニッコウキスゲ。
 キスゲとショウジョウバカマが一度に見られるというのも珍しい。またここのゴゼンタチバナはピンク花。

 帰りは急降下なので、意識的にゆっくり下った。

 登山口に戻ったのは、12時過ぎだった。