麦草峠の駐車場に着いたのが9時を回っていたので、駐車スペースはかなりふさがっていた。
それでも、あいていた最後のスペースに軽トラを止めることができた。
針葉樹林特有の、ぬかるみの匂いが非常に心地よい。
茶水の池を過ぎると早くも、登山道に残雪があらわれた。
雪があると涼しくてよいのだが、踏み抜きやスリップのおそれがあるので、ペースは上がらないが、ずっと緩やかな下りなので、疲れることがない。
スズタケの下生えに、コメツガ・シラビソの樹林帯がずっと続いていて、北八ツらしい。
雪解け水の流れる小沢を一つ渡る。
かなり水量のある沢なので、ここは夏でも流れているかもしれない。
メボソムシクイ・ルリビタキの声が森に響き、頭の上では、ホシガラスが羽づくろいしていた。
歩きにくい道をしばらく行くと、大河原峠につながる林道に出る。
舗装されてはいないが、普通車がラクにすれ違うことのできる、立派な道路だった。
路面からの照り返しがひどく暑い。
雨池への分岐から山道に入ると、ほっとした。
雨池を、大岳あたりの登山道から眺めたことはあるが、畔に立つのは、初めてだった。
意外に大きな池で、湖面を泳ぐカルガモはいるが人影はなく、静寂そのものだった。
対岸の森は、黒木が主ながら、ダケカンバも混じっており、面白い模様を作り出していた。
ここからまずは、八柱山に向かう。
登りというより、ほぼ平坦な森を歩いていくと、カラマツの植林が出てきてひと登りで、大きなアンテナ施設の立つ八柱山に着いた。
人工林と人工物に囲まれて、風情がよいとは言えないが、ヤマザクラはまだ咲き残っていた。
ここで大休止。
雨池に戻り、池の北岸を回り、途中からさっき歩いた林道に登る。
このあたりで雨が降ってきたが、すぐにやんだ。
雨池峠への分岐には大量の残雪があり、この日のコース唯一の急登になった。
上部は石でごろごろしたところだったが、足元で雪解け水が流れる音が聞こえていた。
草原状の雨池峠に来るのは、10年ぶり。
縞枯山荘は変わっていないが、ブンブン回る風力発電機が目新しかった。
坪庭はつまらないのでパスして、五辻への道に入る。
こちらも残雪を踏みながらのコースとなる。
下腹が痛む持病が出かかったので、五辻のあずまやで小休止した。
このあたりにはちらほらと、ハイカーも歩いていた。
ザックを背負って歩き出すと、あたりが涼しくなって、雷が鳴り始めた。
ここからは雨具を着て歩いたが、さほど強い降りにはならなかったので、濡れることはなかった。
ルートの至るところに水が流れており、そんな風景は初めて見た。
そういえば、5月の北八ツを歩くのは、初めてだった。
大石峠の分岐では、直進して、狭霧園地に向かった。
斧断ちの森あたりの針葉樹林もなかなか、風情がよかった。
国道と平行する道をしばらくで、麦草ヒュッテの裏に出た。
草原にヒメイチゲが咲いていたが、折悪しく雨足が強くなったので、ろくな写真を撮ることができなかった。
うまい具合に、ほとんど濡れることなく、軽トラをおいた駐車場に戻ることができた。
|