南八ヶ岳ふらふら歩き

【年月日】

1989年8月3〜4日
【同行者】 単独
【タイム】

8/3 美濃戸口(6:15)−赤岳鉱泉(9:10-10:00)−赤岩ノ頭(10:50)
−赤岳(1:35)−行者小屋(2:45)−赤岳鉱泉(3:10)
8/4 赤岳鉱泉(3:55)−硫黄岳(5:00)−西天狗(7:30)−
オーレン小屋(8:50)−赤岳鉱泉(11:00-11:45)−美濃戸口(1:15)

【地形図】 蓼科、蓼科山

1日目

ミヤマシオガマ

チョウノスケソウ

 6時20分に美濃戸口を出発。しばらくは砂利や簡易舗装の林道歩き。それでも、花の数、種類はかなり多く、赤花のシモツケ、トリアシショウマ、ホタルブクロ、ヤナギラン、紫色の濃いウツボグサ、チダケサシ、クガイソウ、ミヤマママコナ、キバナノヤマオダマキ、イブキジャコウソウ、ソバナ、クサフジ、オオバミゾホオズキなどが咲いていた。

 美濃戸の山小屋部落の駐車場に車がたくさん置いてあった。

 山道になると、白花のイチヤクソウ、実をつけたマイヅルソウ、シナノオトギリ、ズダヤクシュ、クルマユリなどがあらわれる。ここでもキバナノヤマオダマキが多い。ここのは、黄花といっても、がく片はうす黄緑色で、とても清楚だ。

 イワオウギのうす黄色の花が咲く橋のところで一息入れた。

 何度か北沢を渡り返すと、傾斜もこころもちきつくなっていくようだ。

 クルマユリがとても多くなり、メタカラコウ、オニシモツケ、ミヤマコゴメグサ、テガタチドリ、タカネグンナイフウロ、タニキキョウなどがあらわれだし、早くもウメバチソウが咲きはじめていた。

 テガタチドリがあちこちに咲く赤岳鉱泉に着いたのち、さっそく受付をすませ、テントの設営にかかった。
 いちばん乾いていそうなところにテントを張り、腹ごしらえをして、軽荷で硫黄岳に向かった。
 10時に鉱泉を出発、小沢をふたつ渡り、北沢の本流を橋で越えるといよいよ登り。

 比較的明るい樹林のなかだが、花はといえばゴゼンタチバナくらい。前方に空が見えるようになってくると、カラマツソウ、ミヤマキンポウゲ、タカネグンナイフウロなどが見られるようになり、木々の間から赤岳と阿弥陀岳が望まれた。

 稜線では、コケモモがたくさん咲いていた。
 オーレン小屋への分岐を過ぎ、ミヤマダイコンソウの咲くガレ場を少し急登すると、石くずだらけの硫黄岳。

 花に誘われて、腰もおろさずに主稜線へ。
 相変わらずコケモモが多いが、紫色の濃いチシマギキョウも咲いていた。

 石の上をゆるく下っていくと、硫黄岳石室。このあたりから、コマクサとオヤマノエンドウを見る。コマクサがが石くずのなかに点々と咲くさまは、華やかなことこの上なかった。ウルップソウの花が終わっていたのは残念だった。

 コマクサを見ながら稜線漫歩しばらくで、横岳にさしかかる。
 鎖を通した鉄の支柱が時々馬鹿になっており、あまり鎖をあてにせず通った。

 チシマギキョウとミヤマダイコンソウは、いたるところに咲いており、タカネシオガマ、ハクサンイチゲ、チョウノスケソウ、イブキジャコウソウ、イワベンケイ、ミヤマハタザオ、ミヤマミミナグサ、クモマグサ、ミヤマシオガマなどが岩稜の間に乱れ咲いていた。

 横岳主峰で一息入れ、赤岳石室へ。ここにもコマクサがあった。このあたりで行者小屋方面へ下る支稜の上にカモシカがじっと立ってこちらを見つめているのが見えた。写真をとったが、悠然としていた。

 石室で風のこないところを選んで食事。
 ガスが出てきたので早々に赤岳へ向かう。

 頂上が見えているからたいした距離ではないが、そうとうな急登だ。ほとんど四つ足で登った。そこのすぐ南のコブが山頂だった。

 中岳方面への下りで、目印が全くないので、変だと思いながら支稜を下りたが、完全にルートをはずしてしまった。下が垂壁になっているところにぶつかって、小さなルンゼを冷や汗かきながらくだった。

2日目

硫黄岳での黎明

コマクサ

 翌朝は、2時半に寒さで目がさめたので、外を見ると、満点の星空。ふたたび硫黄岳に向かって歩きだしたのは4時前。
 ヘッドランプをつけての登りだ。硫黄岳に着いたのは、ちょうど5時だったが、四方の景観は本当にすばらしかった。

 赤岳と阿弥陀岳が朝日を浴びて目の前に輝いており、阿弥陀岳は、向かって右の肩に、北岳、甲斐駒ケ岳、仙丈ガ岳を従えていた。
 右には中央アルプスが、全山勢揃い。南駒ケ岳の百間ナギが明瞭に見える。その右には木曽御岳山に乗鞍。さらに槍・穂高、剣・立山、後立山。

 北では、浅間山が大きく、はるか北東には日光・上越の山塊。
 赤岳の左には秩父連山のシルエット。金峰山、国師ガ岳、甲武信岳など。富士山を見ることはできなかった。

 展望を堪能したあと、急な下りを夏沢峠へ向かった。
 夏沢峠には、二軒の小屋があって、ハイカーが食事や縦走の準備をしていた。ここで、トイレに入って使用料20円を払い、ついでにここまでのタイムを書くため、ペンを借用。

 箕冠山の分岐点を過ぎると、前方が開けてきて、根石岳が見えてくる。
 箕冠山と根石岳のコルには根石山荘があって、そのまわりはコマクサの群落。

 まだ7時前、コマクサを見たり、写真をとったりしながらぶらぶら。
 東天狗までは一投足。ここまでくると、北側がいっきに広がって、蓼科山や北横岳が全貌をあらわす。

 西天狗を往復すると、急に空腹を感じた。
 根石岳・箕冠山を越え、オーレン小屋に向かった。

 稜線から樹林帯に沈んでいくと、華やかな花や派手な展望がなくなるので、たかぶった気持ちも落ち着いてくる。
 オーレン小屋の前で食事。ビバルディの『四季』がひかえめに流れており、清冽な沢の水の味とともに、好感が持てた。

 ミソガワソウやクルマユリの咲くオーレン小屋をあとにして、赤岩ノ頭への登り。
 いい登りだが、途中に咲くミヤマキンポウゲやクロユリなどの写真をとるのがほどよい休憩になり、何とか座りこまないで赤岩ノ頭に着いた。

 赤岩ノ頭では、高校生の一団がへたばっており、なかには、相当へばっている生徒もいたが、先生らしき人は見えなかった。たぶん先に行ってしまったのだろう。
 赤岳鉱泉への下りで、いかにもだらけた感じの男子生徒が、完全にすわりこんで頭を抱えていた。大丈夫かと聞くと大丈夫ではないという。

 高山病かもしれないからゆっくり下れよというと、手をポケットにつっこんで下りはじめた。手を出せ!とのどまで出かかったが、転べばわかることだと思い直し、黙ってついていってやった。

 赤岳鉱泉に着くと、教師に見離された女生徒がもう一人、頭を抱えていた。