一切経山にて
| 一切経山から五色沼
|
福島駅からバスに乗り、浄土平に着いたのは、12時前。
あられまじりの強風が吹いていたが、とりあえず空身で吾妻小富士へ。
火口一周が30分くらいだが、稜線は風がとても強かった。
それからザックを背負い、酸ヶ平に向かった。
雪のため、夏道が完全に消滅。沢状のところを右岸沿いに登っていくのだが、しだいに膝より上のラッセルとなった。
左岸のガンコウランなどがちらほら露出したところに渡り、さらに登っていくと、地形図どおりの位置に酸ヶ平避難小屋が見えた。
吹雪はその夜いっぱい荒れていたが、気圧がだんだん上がっていたので、好天にむかうことが予想された。
翌朝はきれいに晴れあがり、風もずいぶんおさまったので、一切経山へ。
木も草も生えていない山なので雪がつかず、登りやすい斜面で、30分余りのゆるい登り。
360度の展望、山頂のケルンにはエビのしっぽがついていた。
五色沼のほとりの遭難碑の立っているところから家形山への登り。
ササの中に道を探しながら登っていくと、すぐに岩のごろごろしているところに着き、樹林帯。
樹林帯は膝までのラッセルとなったが、赤ひもがていねいすぎるほどついていたので、なんなく家形山を抜けることができた。
ずっと樹林帯なのでラッセル続きだ。
兵子ピークの見える鞍部からニセ烏帽子を越え、さらに烏帽子山へ。
烏帽子山の頂上はちょっとした広場だが、そこから少し西に行ったところがガレ場になっていて、見はらしがよかった。
休んでいると、昭元との鞍部からおおぜいの高校生パーティが登ってきた。
この日初めて会った登山者だ。
ひょっとして、昭元をラッセルしてきてくれたかと思い、どこからきたか尋ねると、残念にも、谷地平から直接登ってきたとのことだった。
昭元山への登りからは、赤ひもの目印もなくなり、一段と雪が深くなる。
夏道らしきところに雪が吹きだまっていて、苦しいラッセルだった。
昭元山から先も同じ。
この辺は地図がちょうど境目になっていて、読みにくい。
東大巓の手前の小ピークのところで、ツアースキーヤーが楽々とすべってくるのに会った。
そこから木のないなだらかなゲレンデを登りつめ、ようやく東大巓の肩。
ガスっぽくなったが、この日たどってきた長い稜線が望まれ、充実感があった。
弥兵衛平避難小屋もすぐ下に見え、緊張感がほぐれる。
避難小屋に着いたのは12時過ぎと、ずいぶん早い時間だったが、これ以上ラッセルを続ける気にはならなかった。
小屋前から東大顛
| シュカブラの向こうに磐梯山
|
小屋には2時頃から登山者が続々と到着し、17〜8人くらいがこの日は泊まった。
にぎやかなのはまだ我慢できるとして、バックパックを背負った中年の単独の男性がニコチン中毒と見え、煙草を引っきりなしにふかすのには閉口した。
5日は、少し早く、4時に起きた。
ご来光が拝みたかったのと、早く出ないと、前日のラッセルの状況からして、へたをすると西大巓まで行くには、もう一泊しなければならなくなるのではないかと思ったからだ。
小屋から出ると、オオシラビソの樹林ごしに太陽が登ってき、東大巓東面の雪原をオレンジ色に輝かせていた。
朝からすばらしい景色だ。
多少風があったが、またも快晴の出だしとなり、好運だと思った。
早朝なので雪面はクラストしており、歩きやすい。
まもなく縦走路に出、藤十郎の方にゆるく下っていく。
雪がわりあい堅いのと、し っかりしたトレースがついているのとで、前日にくらべればはるかに歩きやすく、ピッチも上がる。
三つのピークをもつなだらかな藤十郎からは、シュカブラのかなたに磐梯山がのぞまれた。
ヤケノママ分岐で休み、いったん下って中大巓へと登り返す。
人形石分岐という道標で、まだ朝7時。
梵天岩とその左の大きな西吾妻山はすぐそこだ。
西吾妻への下りと梵天岩への登りは、ゆるやかだがやや雪の深い大雪原。
樹林帯を避けていったん南側にまわりこみ、梵天岩へと急登。
梵天岩から吾妻神社のある天狗岩までは、転石伝いに歩く。
神社に参拝し、その裏手に回ってみると、目の前に飯豊連峰の大パノラマが展開し、息を飲んだ。
標高は吾妻より少し高いだけだが、さすがに日本海に面しているだけあって、全山真っ白。
西吾妻の小屋には、白布峠から来たという登山者とツアースキーの人がいた。
小屋で腹ごしらえをして、空身で西大巓へ。
時おり樹林帯のラッセルになるがおおむね歩きやすい。
西大巓までは、往復1時間だった。
西吾妻からは、若女平へ下る。
はっきりしない尾根をはずさないように急降下。
スキーのシュプールがあらわれたので、そのあとをついていく。
シュプールは夏道と違い、沢をからみながら下っていく。
すぐに足元で沢音が聞こえるようになり、シュルントが出てくると、シュプールは尾根のうえに登った。
オオシラビソの樹林から茶色のダケカンバ帯にはいると、傾斜がなくなり、ヤブっぽくなった。このあたりが若女平だろう。
天狗岩から西大顛
| 西大顛から磐梯山
|
風がないので汗が吹き出す。
ところどころ雪が消えてぬかるみがあらわれ、里におりてきた実感がわく。
あたりがカラマツの植林になった頃、ショウジョウバカマのピンクの花がそこここに見られた。
スギの植林を抜けると広い伐採地。
伐採地の山主らしき人が、熊はいたかと尋ねてきた。
熊は見なかったが、足跡なら昨日ニセ烏帽子で見たと答えると、熊打ちの期限が切れそうなので早く打ちに行かなければ、と言っていた。
ためしに、熊の肉はうまいかと尋ねてみると、鹿やカモシカよりずっとうまいと言っていた。
カモシカを食ってもいいのかというと、今の政治家のやっている悪事にくらべれば、カモシカを食べるくらい大したことではない、という返事なので、まったく同感だと笑ってしまった。
道路から天元台スキー場方面に少し登ったところに白布温泉の国民宿舎があったので、そこの風呂に入った。
登山者に対して、まるで人間扱いしない態度は気にくわなかったが、温泉はなかなかよかった。
|