オニノヤガラ
| 尾瀬沼とハクサンシャクナゲ
|
一日目(大清水〜渋沢温泉小屋)
以前から歩いてみたかった燧裏林道に出かけた。
大清水の駐車場は、それほど混んでいなかった。
それでも、団体さんや小パーティが続々と出発していくのは尾瀬ならでは。
旧国道の長い歩きは単調で飽きるが、ウォーミングアップにはちょうどよい。
花はまだあまりなく、えび茶のヤマオダマキが咲いていたくらい。
それでも、柳沢の橋で一息入れていたら、オニノヤガラの群生が目に入った。
一ノ瀬前後でエニシダが咲いていたのは、ちょっと気になる。
誰かが植えたか、種をまいたのではないかと思うが、登山道に入ったところにも咲いていたので、早く除去しないとどんどん奥に入ってくるのではないだろうか。
三平峠の登りは、下りより楽かもしれない。
オオバミゾホオズキ、ウラジロヨウラク、モミジカラマツ、ゴゼンタチバナ、アカモノなどが咲き、ようやく深山に来たという雰囲気となる。
三平下で小休止。
空は曇ってはいるが、降り出す気配はない。
沼尻への周遊路にはオガラバナが満開。
地味な花だが、たくさん咲くととても面白い被写体になる。
湖畔のハクサンシャクナゲはちょうど咲き始めたところ。
オオシラビソの球果が若木にもついていて、上を向いていた。
沼尻が近くなると小湿原。
ツマトリソウ、タテヤマリンドウ、イワカガミ、ワタスゲ、コバイケイソウ、ヒメシャクナゲなどがさかんに咲いており、ミズバショウとチングルマがいくつか咲き残っていた。
ニッコウキスゲ、レンゲツツジ、ヒオウギアヤメが咲く沼尻を過ぎて、段小屋坂の樹林帯。
ブナやシナの大木が多くなり、鳥の声も多くなる。
ウグイス、コマドリ、メボソムシクイ、シジュウカラ、ヤブサメ、コルリ、エゾムシクイなど。
見晴も人が多かったが、大混雑というほどでもなかった。
ここで大休止して、温泉小屋方面に向かった。
赤田代周辺では、キスゲやタテヤマリンドウなどのほか、ヤナギトラノオ、ハクサンチドリ、サワラン、トキソウ、ツルコケモモ、カキツバタ、オニノヤガラなどが咲いていた。
渋沢温泉小屋
| ネズコの森
|
ヤナギトラノオを見たのは久しぶり。
温泉小屋周辺ではハクサンチドリがずいぶん多かった。
ここで3時半。
ちょっと忙しくなってきた。
滝見物をする時間はないので、ここから燧裏林道に入る。
ゆるやかな下りだが、周囲はブナやカエデの原生林。
尾瀬というより、会津の山を歩いているという実感がある。
倒木にアラゲカワキタケを発見。
これは今まで未見のきのこ。
ヒラタケに似ているが、剛毛が生えていて肉は硬い。
立派な登山道だが、尾瀬の喧噪とはうって変わって、通る人は皆無。
同行者にいかにも熊がいそうな雰囲気だと言うと、でたらめな歌を歌いながら歩き始めた。
三叉路はいったん左。
すぐにまた三叉路で、今度は右の道をとる。
しばらくすると急降下で、沢音が近づくと渋沢温泉小屋に着いた。
きれいに磨かれた清潔な小屋で、白濁した温泉はいつまでも浸かっていたいほど、気持ちがよかった。
料理は山菜・きのこ・イワナの料理。
プライベートで食事付きの山小屋に泊まったのはたぶん3度目だが、今まででもっともくつろげた。
二日目(渋沢温泉小屋〜大清水)
翌朝は6時半に出発。
この日は雨予報だったのだが、窓を開けると青空さえのぞくいい天気だった。
シボ沢を渡って急斜面に取りつくとすぐに、ショウキランの花を見る。
これは尾瀬でときどき見るのだが、めったに見られるものではないので、うれしかった。
大江湿原から望む燧ヶ岳
| コメツガの若い実
|
しばらくは急登だが、がまんして登る。
周囲は相変わらずブナの原生林。
尾根っぽいところには大きなネズコも生えている。
ホオの実の上に、ホソツクシタケがたくさん出ているところがいくつか。
これも初めて見たきのこ。
ほどなく傾斜がゆるむのだが、湿地帯に蚊の大群が待ちかまえていて、歩いていくといっせいに飛び立ち、襲撃してくる。
Tシャツ姿で歩いていたため、これには参ってしまった。
見応えのあるネズコの大木が多くなってくると、天神田代の三叉路で燧裏林道に出合う。
ここでぱらぱらと雨が降ったが、5分くらいでやんでしまった。
ここからはトラバースだが、少しずつ高度を上げるので、ブナやネズコに代わって、オオシラビソが多くなる。
しばらくでノメリ田代。
タテヤマリンドウが一面に咲いているようすは、宝石をぶちまけたようだ。
コバイケイソウ、イワカガミ、ツマトリソウなども咲いていた。
ここからは樹林帯と湿原とが断続する。
湿原のへりでは、ベニサラサドウダンツツジが満開。
これもみごとだった。
湿原の向こうには、荒沢岳・未丈ヶ岳などという、懐かしい山も望まれた。
観光客でごった返す御池に着いたのは9時半過ぎ。
ここからシャトルバスで沼山峠下に向かう。
ヒメシジミ
| オガラバナ
|
沼山峠まで来れば、あとは歩いて帰るだけなので、気持ち的にのんびりできた。
大江川湿原のキスゲもまだほとんど咲いていなかったが、今年はつぼみが非常に多いから、2週間後には湿原全体が黄色に染まるだろう。
木道わきに場所を見つけて大休止。
コーヒーと焼きそばと日本酒イッパイなのだが、通行人が多いので、ちょっと食べづらい。
でも、いい風が吹き渡っていて、とても涼しい。
湿原のかなたには燧ヶ岳がよく見えていた。
梅雨前線はどこに行ったのか、結局雨に降られない、いい尾瀬行きだった。
|