原生林と点在する湿原
- 燧裏林道 -

【年月日】

2005年7月9〜10日
【同行者】 Uさん
【タイム】

7/9 大清水(9:10)−三平下(11:35-12:00)−沼尻(13:00)−
   見晴(14:15-14:50)−温泉小屋(15:30)−渋沢温泉小屋(17:00)
7/10 渋沢温泉小屋(6:30)−天神田代(8:00)−御池(9:35)
   −バス−沼山バス停(10:35)−三平下(12:47)−大清水(15:00)

【地形図】 燧ヶ岳、三平峠 ルート地図
【関連ページ】 夏の燧裏林道

オニノヤガラ
尾瀬沼とハクサンシャクナゲ

一日目(大清水〜渋沢温泉小屋)

 以前から歩いてみたかった燧裏林道に出かけた。

 大清水の駐車場は、それほど混んでいなかった。
 それでも、団体さんや小パーティが続々と出発していくのは尾瀬ならでは。

 旧国道の長い歩きは単調で飽きるが、ウォーミングアップにはちょうどよい。
 花はまだあまりなく、えび茶のヤマオダマキが咲いていたくらい。

 それでも、柳沢の橋で一息入れていたら、オニノヤガラの群生が目に入った。

 一ノ瀬前後でエニシダが咲いていたのは、ちょっと気になる。
 誰かが植えたか、種をまいたのではないかと思うが、登山道に入ったところにも咲いていたので、早く除去しないとどんどん奥に入ってくるのではないだろうか。

 三平峠の登りは、下りより楽かもしれない。
 オオバミゾホオズキ、ウラジロヨウラク、モミジカラマツ、ゴゼンタチバナ、アカモノなどが咲き、ようやく深山に来たという雰囲気となる。

 三平下で小休止。
 空は曇ってはいるが、降り出す気配はない。

 沼尻への周遊路にはオガラバナが満開。
 地味な花だが、たくさん咲くととても面白い被写体になる。

 湖畔のハクサンシャクナゲはちょうど咲き始めたところ。
 オオシラビソの球果が若木にもついていて、上を向いていた。

 沼尻が近くなると小湿原。
 ツマトリソウ、タテヤマリンドウ、イワカガミ、ワタスゲ、コバイケイソウ、ヒメシャクナゲなどがさかんに咲いており、ミズバショウとチングルマがいくつか咲き残っていた。

 ニッコウキスゲ、レンゲツツジ、ヒオウギアヤメが咲く沼尻を過ぎて、段小屋坂の樹林帯。
 ブナやシナの大木が多くなり、鳥の声も多くなる。
 ウグイス、コマドリ、メボソムシクイ、シジュウカラ、ヤブサメ、コルリ、エゾムシクイなど。

 見晴も人が多かったが、大混雑というほどでもなかった。
 ここで大休止して、温泉小屋方面に向かった。

 赤田代周辺では、キスゲやタテヤマリンドウなどのほか、ヤナギトラノオ、ハクサンチドリ、サワラン、トキソウ、ツルコケモモ、カキツバタ、オニノヤガラなどが咲いていた。

渋沢温泉小屋
ネズコの森

 ヤナギトラノオを見たのは久しぶり。

 温泉小屋周辺ではハクサンチドリがずいぶん多かった。
 ここで3時半。
 ちょっと忙しくなってきた。

 滝見物をする時間はないので、ここから燧裏林道に入る。
 ゆるやかな下りだが、周囲はブナやカエデの原生林。
 尾瀬というより、会津の山を歩いているという実感がある。

 倒木にアラゲカワキタケを発見。
 これは今まで未見のきのこ。
 ヒラタケに似ているが、剛毛が生えていて肉は硬い。

 立派な登山道だが、尾瀬の喧噪とはうって変わって、通る人は皆無。
 同行者にいかにも熊がいそうな雰囲気だと言うと、でたらめな歌を歌いながら歩き始めた。

 三叉路はいったん左。
 すぐにまた三叉路で、今度は右の道をとる。

 しばらくすると急降下で、沢音が近づくと渋沢温泉小屋に着いた。
 きれいに磨かれた清潔な小屋で、白濁した温泉はいつまでも浸かっていたいほど、気持ちがよかった。

 料理は山菜・きのこ・イワナの料理。
 プライベートで食事付きの山小屋に泊まったのはたぶん3度目だが、今まででもっともくつろげた。

二日目(渋沢温泉小屋〜大清水)

 翌朝は6時半に出発。
 この日は雨予報だったのだが、窓を開けると青空さえのぞくいい天気だった。

 シボ沢を渡って急斜面に取りつくとすぐに、ショウキランの花を見る。
 これは尾瀬でときどき見るのだが、めったに見られるものではないので、うれしかった。

大江湿原から望む燧ヶ岳
コメツガの若い実

 しばらくは急登だが、がまんして登る。
 周囲は相変わらずブナの原生林。
 尾根っぽいところには大きなネズコも生えている。

 ホオの実の上に、ホソツクシタケがたくさん出ているところがいくつか。
 これも初めて見たきのこ。

 ほどなく傾斜がゆるむのだが、湿地帯に蚊の大群が待ちかまえていて、歩いていくといっせいに飛び立ち、襲撃してくる。
 Tシャツ姿で歩いていたため、これには参ってしまった。

 見応えのあるネズコの大木が多くなってくると、天神田代の三叉路で燧裏林道に出合う。
 ここでぱらぱらと雨が降ったが、5分くらいでやんでしまった。

 ここからはトラバースだが、少しずつ高度を上げるので、ブナやネズコに代わって、オオシラビソが多くなる。

 しばらくでノメリ田代。
 タテヤマリンドウが一面に咲いているようすは、宝石をぶちまけたようだ。
 コバイケイソウ、イワカガミ、ツマトリソウなども咲いていた。

 ここからは樹林帯と湿原とが断続する。
 湿原のへりでは、ベニサラサドウダンツツジが満開。
 これもみごとだった。

 湿原の向こうには、荒沢岳・未丈ヶ岳などという、懐かしい山も望まれた。

 観光客でごった返す御池に着いたのは9時半過ぎ。
 ここからシャトルバスで沼山峠下に向かう。

ヒメシジミ
オガラバナ

 沼山峠まで来れば、あとは歩いて帰るだけなので、気持ち的にのんびりできた。

 大江川湿原のキスゲもまだほとんど咲いていなかったが、今年はつぼみが非常に多いから、2週間後には湿原全体が黄色に染まるだろう。

 木道わきに場所を見つけて大休止。
 コーヒーと焼きそばと日本酒イッパイなのだが、通行人が多いので、ちょっと食べづらい。
 でも、いい風が吹き渡っていて、とても涼しい。
 湿原のかなたには燧ヶ岳がよく見えていた。

 梅雨前線はどこに行ったのか、結局雨に降られない、いい尾瀬行きだった。