空沢山から流石山

  【年月日】 1997年7月15日
  【パーティ】単独
  【タイム】 音金登山口(8:00)−空沢山(10:30)−三倉山本峰(11:45)
        −流石山(1:45)−大峠(2:33)−ヨロイ沢先(3:00)
  【地形図】 那須岳、甲子山

マルバダケブキ

遠景は茶臼岳

   音金の三倉山登山口は、のっけからひどい急登だ。
 ひさびさの山登りなので、荷を軽くしてきたのだが、息が切れてしかたがない。

 植林を抜けると、雑木林。
 草いきれの中で、トリアシショウマ、オオバギボウシ、コアジサイなどが咲いていた。

 足元に目をやると、テングタケの大発生。
 キノコの季節がやってきたので、うれしい。そこら中にテングタケが出ている光景は、なかなか見ものだった。
 タマゴタケやカワリハツ、シワチャヤマイグチ、ドクベニタケの仲間など何種類かのキノコの写真が撮れたので、満足。

 伐採地でやや平坦になるが、すぐにまた急登。
 このあたり、ヤブはひどいが、踏みあとはついていた。

 1113標高点を過ぎ、しばらく行くと、アスナロの自然林。
 斧がまったく入っていないということはないようだが、伐採の痕跡は見られない。

 このあたりには、束生したモリノカレバタケをたくさん見かけた。
 ことによると、アマタケかもしれない。

 また、ヤマイグチや、アンズタケに似たキノコの菌輪も見た。

 クロジ、コマドリのさえずりの中、踏みあとをたどるが、ヤブは濃く、油断はできない。
 1515標高点を過ぎると、花をつけたハクサンシャクナゲが目を慰めるが、しだいに密ヤブ化する登りが苦痛になってきた。

 少し陽の射すところにゴゼンタチバナの花を見ると、ヤブの中に切り開かれた空沢山(からさわやま)三角点。
 登りはじめから急登二時間半。

 ほっと心が和むところだが、いたるところに井上昌子の落書きがあって、台無しだ。
 ひといき入れて、三倉山に向かって、再びヤブに突入。

 ここから先、まともな踏みあとはほとんどなし。ネマガリタケとアスナロ、クロベ、シャクナゲなどの密ヤブの中のかすかな踏みあとを丹念に拾う。
 完全なヤブ泳ぎを強いられるところも少なくないが、とぎれとぎれの踏みあとを拾えるかどうかで、疲労度は数倍になるところだ。

 ヤブの中でがさがさという音。自分ではない。
 アスナロの幹に熊の爪研ぎあとを見たので、ここは声をかけて通過。

 樹木の背丈がしだいに低くなり、ハイマツ、アカミノイヌツゲ、ナナカマド、ホツツジ、ハクサンシャクナゲなどのヤブになると、三倉山の一角がけっこう近く望まれるが、このあたり、五メートル進むのに一分かかる。

 ここで赤のスプレーペンキのキャップを拾った。
 たぶん、あいつのだ。

 ようやく飛びだしたピークには、井上昌子の筆跡で「一の倉」とあった。
 三倉山の北峰だ。

 へとへとだったが、ここからは、ちゃんとした登山道があるので、生き返る。
 シモツケの花がたくさん咲いており、クジャクチョウが蜜を吸っていた。

 三倉山本峰、三角点峰と、気持ちのよい尾根つづき。
 多少もやがかかってはいるものの、茶臼岳から二岐山にかけてよく見えていた。
 南月山だけはガス。
 雪のない茶臼岳は、怪峰といえるほど、妙な形だ。
 三本槍のボリュームと旭岳のすらりとした姿が印象的だ。

 あたりのシャクナゲは満開。
 白、ピンク。その中間。
 咲き競うシャクナゲの海の中を漂いながら、右顧左眄する。

 五葉の泉は尾根の上にあるのに、チョロチョロと流れ出ていて、摩訶不思議なところ。
 ここから先が待望のお花畑。

 ニッコウキスゲとコバイケイソウがめだつが、コバイケイソウは盛りを過ぎた感じ。
 足元には、ウサギギク、ヤマブキショウマ、カラマツソウ、シュロソウ、ネバリノギラン、オトギリソウ、ニガナ(白・黄)などが咲き乱れている。

 ヒメシャジンやトキソウも見た。
 むらさき色の花を見ると、秋の予感がする。

 あいかわらずハクサンシャクナゲは多く、シモツケは白から紅色までのバリエーション豊かだ。
 ウラジロヨウラクもさかんに咲いていた。

 流石山まで来ると、茶臼岳や三本槍岳がま近く迫り、三斗小屋の赤い屋根も見えた。
 大峠界隈も花の多いところで、それまでに見た花のほかにミネウスユキソウが咲いていた。

 お花畑のまん中に座り込んで写真を撮っている人がいたので、「そんな場に座っちゃあ花がかわいそうじゃねん」と言ったら、出てくれた。
 標準語でちゃんと言えばよかったと少し後悔した。

 大峠には、首の欠けた石仏がたくさん。
 石仏の首が欠けているのは、江戸時代に寺院が横暴なことをしていた仕返しではあるのだが、石仏に罪があるじゃなし、石仏破壊も一種の横暴の歴史だと思ってしまう。

 大峠から林道終点までは20分ほど。
 自転車をデポしておいたヨロイ沢手前までは10分もかからなかったが、そこから音金までは、自転車で一時間かかった。