護摩滝
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今回は、滝ノ原の三滝温泉旅館に泊まった。ここは二回目。\8500。もてなしも食事も、風呂もまずまずだ。この時期に来ると、天然キノコの料理が出るのがうれしい。
翌日は、雲が多いながら、まずまずの天気。
駒止湿原をのぞいてから博士山と考えていたのだが、121号線から望んだ七ヶ岳の紅葉がすばらしい。
この天気に、一等三角点峰をむざむざふもとから見て過ぎることはない。地形図も持ってきたことなので、今日は七ヶ岳と決めた。
田島町から289号線に入り、針生集落からダートの七ヶ岳林道。
あなぼこは多いが、走行に支障なし。
道ばたの紅葉が美しく、自動車で走るのがもったいない。
下岳登山口にMTBをデポし、少し戻って、黒森沢登山口から歩きだした。
歩き出しは、二次林の中の林道あと。
ブナ、ミズナラ、カンバ類、カエデ類の紅黄葉が、妍を競う。
紅葉というのは、少し離れたところから見るのがいちばんだが、一枚一枚の葉っぱをつくづくと眺めてみると、それぞれ微妙な色合いがあって、これ自体がひとつの芸術だと思う。
その芸術を踏みしめながら歩く幸福。
二次林はしばらくで終わり、昼滝山造林地という看板のあるスギ林。
足元がぬかって歩きにくいところ。
そこを抜けるとキヌメリガサの出ているカラマツ林だが、すぐにまた美しい二次林。
「七ヶ岳自然環境保全地域」なる看板がこれ見よがしに立てられているが、どうせ指定するなら、伐る前に保全すれば?と言いたくなる。
約一時間で黒森沢。
登山道はここまでで、ここからはひさびさに沢登り。
といっても、明るい沢で、石は火山性なのか、ざらざらしていて、登山靴でも十分フリクションがきく。
やっぱり沢はいいな。
しばらく快適に登っていくと、前方に大きな滝。
護摩滝だ。
水量が乏しいのであまり威圧感がないが、なかなかりっぱ。
滝を観賞がてら、小休止。
一見したところ、高さは20メートルほど。
大きく3段に分かれたスダレ状の滝で、それぞれのテラスで水流をまたぐのは簡単そうだ。
まずは右岸の踏みあとで最下段の滝をかわす。
さらに左岸に下がったロープを利用して、次の段に登る。
そして今度はふたたび右岸のロープで3段目の滝上に出る。
下から見ると、これでおしまいのようなのだが、ここからは斜度のあるナメがえんえんと続く。
ロープがないのでこのナメの方が緊張する。
傾斜がゆるんでも気を抜くなと同行者に注意し、慎重に登る。
ナメの部分も入れれば、護摩滝の全高は50メートルほどもあるのではないだろうか。
水量などの状況にもよるが、この滝登りだけは、沢登りのちゃんとした足支度をした方がよい。
平坦なところに来てほっとするが、その先も沢はずっとナメ床。
しだいにせばまる両岸は細いネマガリタケのヤブなので、沢の中を歩くしかない。
なるべく靴をぬらさないように跳んだりまたいだりの遡行をしばらくで、最後の水場となる。
ここで水をたっぷり補給し、涸れ沢をしばらく行くと、山腹のジグザグ道となり、展望の利くササ原。
シャクナゲ、ブナ、ヒメコマツ、ダケカンバ、アカミノイヌツゲなどの疎林を少し登ると、高杖スキー場からの道に、ぽっかりとび出した。
いきなり眺望が開け、程窪沢源流の原生林の黄葉がゴージャス。
岩藤山らしき鋭峰が全山紅葉しているのも、すばらしい。
七ヶ岳から見下ろす紅葉
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そこから山頂はすぐで、山頂の展望も、さすがにゴージャスだった。
20万分の1の「日光」の図幅にある山はほとんど見えるといっていいくらいにすばらしい展望。
南に見える大きな山塊は日光連山と高原山。
その手前には幾重にも重なる南会津のミディアムな山々が色づいている。
荒海山と枯木山は、なかでも目立つ山だ。
南東の大きな山は男鹿山塊。
目の下のあまりぱっとしない細長いピークが、昨日登った貝鳴山。
東には、那須連山。
南月山から茶臼岳、朝日岳あたりは明瞭だが、三本槍は茫漠たる山容で、ピークらしくない。
茶臼岳の噴煙が気のせいか、ずいぶん多くなっているような気がした。
大白森から小白森への稜線がゆるく下った先に、二岐山がぐっと高まる。
会津方面を見ると、このあいだ登った大戸岳と小野岳が見えた。
その向こうの安達太良や吾妻は雲の中だった。
すぐ北の大きな山は博士山だろう。
はるか西を見ると、燧ヶ岳、そしてずいぶん白くなった会津駒ヶ岳。
こちら方向で目をひかれるのは、大嵐山だ。
西側は電波塔のようなものの立つピークで、展望がさえぎられるが、少しだけ顔を出している白い山は会津朝日あたりだろうか。
今日もここまでにこれといったキノコがとれなかったので、家から持ってきた薄味つきクリタケと、カラマツ林のところに出ていたキヌメリガサをうどんに入れた。
どっちを向いても、いつまで見ていても見飽きない景色だが、今日は埼玉まで帰らなければならない。
軽くなったザックを背負い、来た方とは逆に、下岳への縦走路へ。
はじめは、ハイマツ、シャクナゲ、クロベなどの灌木の中の緩やかな道。
展望がよく、空気が澄んでいるので、快適なことこの上ない。
しかし、しだいにササが濃くなり、やがて背丈を没するササの中の道。
踏みあとがはっきりしているからよいが、ヤブになれていないと少し不安かもしれない。
アスナロの木のあるあたりからやや急な登りとなり、ピークに着くが、腰を下ろせるスペースが見つからない。
この尾根には原生の大木は少なく、キノコはあまり期待できそうにない感じだ。
このあたりの、とあるピーク上でとても奇妙な木を見た。イチイの大木なのだが、何本かの幹が合体して太い幹になり、枝先が四方に垂れ下がっていた。
ずいぶん歩いてようやく下岳。
ここからは、いくらかブナの大木が出てき、登山道も刈り払いされて歩きやすくなる。
途中でナメコやムキタケの出た木があったため、キノコ摘みのために少しロスタイムがあったが、流星号をデポした下岳登山口までは、山頂から3時間近くかかった。
帰りは塩原でいさきの湯。
ここのお湯は夏の間は熱いのだが、寒くなるとだんだんぬるくなるんだそうな。この日の湯加減はバッチリだった。