大木の森 大戸岳

  【年月日】 1996年9月29日
  【パーティ】 2人
  【タイム】 芦ノ牧温泉(8:28)−(会津鉄道)−芦ノ牧温泉南(8:39-8:50)
        −水場(9:57-10:00)−最後の水場(10:47)−天狗の休み場
        (11:26-11:34)−大戸岳(12:50-1:36)−水場(3:05)−荒俣林
        道(4:08)−闇川(4:28)
  【地形図】 湯野上、上三寄

カワミドリ

荒俣沢

 秋になったので、ブナ林を歩きたくて、会津に出かけた。

 よく晴れた日曜日、まずは芦ノ牧温泉の大戸岳をめざした。この山は、郡山近くの高旗山から会津方面を望んだとき、まさに戸を立てたような台形の山容が印象的だった山だ。

 下山口に予定した闇川集落にMTBをデポし、芦ノ牧温泉駅に向かう。今回の山行は自動車と自転車と電車をアプローチに使った。

 歩き始めてから一時間で、小沢を渡る。ここで小休止。
 芦ノ牧温泉から芦ノ牧温泉南駅まで、ワンマンカーの会津鉄道に乗る。
 乗るときに整理券をとって、降りるときに運賃箱に小銭を入れる、バスとおんなじ乗り方だ。

 駅前で腹ごしらえをして、山畑のあいだをゆっくりと登っていく。
 道標のたぐいがまったくないので、登山口がわからない。

 湯殿山と深く彫り込んだ石塔のわきに、たくさんの馬頭尊。
 大川ダム下にあったものを移したのだろうか。

 墓地の前を過ぎると、右下にワサビ田がある。ワサビ田に導かれた用水路のわきに道らしき踏みあとがあるので、そこから山に入った。

 用水路わきの小径はとある小滝で消え、そこからは沢登り。
 登山靴なのでとても歩きにくい。
 しばらくは沢を行ったが、ゴルジュになりそうな感じがしたので、途中から右岸のヤブを急登。
 立木にすがりながら二十分ほどの登りで、正規の登山道に出た。

 登山道にはたくさんの山栗。
 それを拾いながら行くので、歩程ははかどらない。
 栗の木の下にさしかかると、分速五メートルくらい。
 ホコリタケ、アシグロタケ、カバイロツルタケなどが出ているが、今日の本命ではないので、手は出さない。

 あたりはミズナラ、ブナ、カエデなどの二次林だが、なぜかモミの幼樹がすこぶる多い。
 沢筋にはトチやクルミがたくさん落ちている。
 あざやかな緑色のモエギタケが足元に出ていた。

 最後の水場から主尾根に向かっての急登。
 ここは、クロベとヒメコマツの原生林。
 クロベもすごいが、何本かのヒメコマツはあきれるほどの巨木だ。
 えげつないほど急な登りだが、観木しながら行くので、さほどのつらさは感じなかった。

 やがて広葉樹がいくらかまじりはじめると、ブナハリタケの小群生。
 とりあえず、うどんの実が確保できた。
 その上、天狗の休み場と書かれたところで小休止。

 展望がなくても、クリフウセンタケに似たキノコ、名前のわからないテングタケ科のキノコなど、いろいろあって飽きずに登れる。

 頂稜近くからは、ブナの原生林。
 林床にはクルマバハグマ、アキノキリンソウなど。
 枯れ木にはツキヨタケが多く、ブナハリタケはこのあたりでは見あたらなかった。
 トンビマイタケの腐ったのがたくさんあったので、1996年は会津も雨がすくなかったのだなと思った。

 あまり道草をしなかったのに、山頂まで四時間近くかかってしまった。
 でも、快晴無風、さわやかな秋晴れだ。

 猪苗代湖の向こうには吾妻連峰、安達太良連峰が見える。磐梯山はずいぶん近い。
 飯豊には残雪が光っている。

 郡山から白河にかけてはおもしろそうな低山がたくさん並んでいるが、二十万分の一の地図を忘れてきたので、名前のわからないのが残念。

 山頂の石祠のわきで大休止。ブナハリタケとホコリタケのうどん。
 朝が早かったのと、暖かいのとで、昼寝をしたくなる。

 来た方とは逆へと下山にかかる。急降下してすぐに露岩の上。
 ここは山頂より展望がよい。ただ北側が切れ落ちているので、注意が必要。

 南側を見ると、林道が這い登ってきていて、ブナ林が無残に皆伐されている。
 灌木の生えたやせ尾根をしばらく下ると再び樹林帯となり、登山道は尾根をはずれて北側の沢の源頭へと降りていく。
 ここはブナとダケカンバの多いところで、キノコが多かった。
 ヒラタケ、ムキタケ、ナラ タケ、ブナハリタケ、クリタケ、ニガクリタケ、チシオタケ、キララタケ、ヌメリスギタケ、ヤマイグチなどがあった。
 ナラタケは非常に多かったが、いずれもややホウけていたのは残念。

 水場を過ぎ、しばらく下ると、ふたたび尾根の上。
 ここにはアスナロの大木があって、しばらくはブナとアスナロの林。
 アスナロがなくなると、ブナとミズナラの二次林となり、なんとなく人里に近づいた感じ。

 やがて伐採後の荒れ地、スギ林などを見るが最後はまた雑木の二次林。
 キノコはもう出ていないと思いきや、十年生くらいのミズナラの枯れ木にヤマブシタケが出ていてくれた。

 林道に出たのはすでに四時過ぎ、けっこう登りがいのある山だった。

 林道に沿う荒俣沢には、ヤマトリカブト、ダイモンジソウ、カワミドリなどが咲いていた。
 玉石の多い、水のきれいな沢だが、淵が石で埋まって気の毒だ。

 闇川が近づくと、前方に思案岳が高くそびえていた。
 この山は見晴らしがよさそうだなあと思案しているうちに、闇川に着いた。

 芦ノ牧温泉駅まではMTBで十分ほどだった。