中ノ岐林道から平ヶ岳

 【年月日】  1990年7月8〜9日
 【パーティ】 極楽蜻蛉と友人
 【タイム】  7/8 登山口(8:00)−玉子石(10:20)−平ヶ岳(11:25)−登山口(4:00)
 【地形図】 平ヶ岳、尾瀬ヶ原

池塘と山頂

 中ノ岐林道はかなり路面が荒れているが、どうしようもないというほどではなかった。
 終点まで入ってみると、意外なことに、自動車がたくさん入っていて、駐車スペースがなかった。
 やむなく、道端に駐車し、8時10分に行動開始。

 沢を飛び石伝いに渡って水を補給し、登りにかかる。
 オオバミゾホオズキ、モミジカラマツ、キヌガサソウ、ニガナなどが咲いていた。
 サンカヨウの紫いろの実も多い。
 典型的な尾根道でとりつきの登りがたいへんきつい。
 ツバメオモトの実、ツクバネソウの実、黒っぽいエンレイソウ、ユキザサなどがあらわれる。

 荒沢岳が見えるほど登って来たところでまた小休止。
 あたりでしばらくネマガリタケやユキザサの若芽、ハリブキの若芽など摘んだ。
 このあたりまで来ると、サンカヨウも花を咲かせている最中。

 マイヅルソウやミツバオウレン、ゴゼンタチバナなどの花が目立つようになってくると、傾斜がややゆるくなるような気がしてくる。
 シャクナゲやシラビソがあらわれてくると、いよいよ森林限界を越えて、天上に飛び出した。

 ササヤブと樹林が突然消えて、いきなり木道の敷かれた湿原。
 そこは玉子石と池ノ岳の鞍部だった。
 まずは玉子石へ。
 玉子石ピークに登ると、北側に大展望。
 ややガスってはいるが、やはり、越後駒ケ岳と中ノ岳が圧巻。
 兎岳は中ノ岳と重なっている。荒沢岳から兎岳へと連なる稜線はやはり長い。兎から丹後山への稜線も意外に長く感じた。丹後山は、思ったほど大きくはなかった。大水上山などはほとんど目立たないピークだ。
 南側も東側にも木は生えていないのだが、池ノ岳と平ケ岳の膨大な山体に隠されてしまっている。
 奇岩玉子石は、セメントで接着してあるのではないかと思っていたが、そばで見ると自然の造形なのだった。しばし展望を楽しんでから池ノ岳へ。

 みごとな傾斜湿原のなかのハイマツやシャクナゲ帯を抜けて、緩やかな下り。
 イワイチョウ、チングルマ、タテヤマリンドウ、ワタスゲ、ヒメシャクナゲ、コバイケイソウ、モウセンゴケなどの湿原植物が目を楽しませてくれた。
 潅木ではウラジロヨウラク、ベニドウダンなどが咲き誇っているところだった。
 平ケ岳沢の源頭のテント場を右に見るあたりには雪田も。
 久しぶりに雪を踏む。池ノ岳は道標がなければどこが山頂だかわからないほうなピークで、まるで人口物のような池塘が二つばかり並んでいた。
 南へとゆっくり下っていくと、「ツガの廊下」の指導標が二ヶ所ほどある樹林帯。
 緩やかな登りに転じ、再び湿原のうえに飛び出すと、三角点はすぐそこだった。
 このあたりには、ハクサンコザクラもすこし咲き残っており、ワタスゲやチングルマの群落は玉子石周辺よりは大きかった。

 今度の展望は南側と東側。
チングルマ

 ここからはやはり燧ヶ岳。なんといっても周囲を抜けた高さ、そして鋭い山容は他の山の比ではなく、爆烈火口らしきガレが明瞭に認められた。
 目の前の山は白沢山。平ヶ岳に比べればかなり背が低いのは否めないが、形はなかなかよく、稜線にヤブも少ないのでテントを張れば往復できそうな感じ。
 白沢山の向こうから尾瀬への障壁になっている稜線がある。大白沢山、景鶴山、ヨサク岳など。
 その向こうの至仏山の鋭い姿の方は印象的だ。会津駒ヶ岳からもそうだったが、尾瀬ヶ原から見る柔和な山容とは似つかぬ至仏の厳しさがここからも見えていた。そして至仏のかなたの独立峰−あたかも乗鞍か御岳山のような印象の−武尊がかすんで見えた。

 三角点はハイマツや潅木の中にあり、小広場。
 ここで食事。食べてしまうと眠くなってきたので、三角点の横でザックを枕にしてすこし昼寝。
 雲は多いが、つよい陽射しがさしており、さわやかな風がわたってきて心地よい。頂上には思ったより人が多いがあちこちに分散しているので、まずまず静か。
 日が翳るとさすがに寒いので目がさめた。
 長袖のシャツを着込んで西の方の草原地帯に行ってみると、至仏を背景にしてチングルマがみごとだ。
 この日は誰もが眠くなる陽気だったので、木道が尽きるあたりにはおおぜいの人が寝ていた。
 西の方はるかに巻機山。寝てる人だらけで腰をおろす場所もないので、三角点に戻った。