懸の森の山名は、二万五千分の一の地形図にも出ていない。
三角点のあるピークは、毘沙目木というが、この山名も、地図には出ていない。
しかし、小高町観光協会によって、よく整備されたコースになっている。
このコースのポイントは、太平洋の展望と、毘沙目木の一等三角点だろう。
朝方の雨もやんで、青空がのぞいた。
広い駐車場のある羽倉登山口から、広いあぜ道を行く。
畑や田んぼと、そばを流れる用水路。
懐かしい日本の田園風景だ。
大根・白菜・シャクシ菜などが、陽当たりのよい畑に、よく育っていた。
ネギは、俺のほうが上手かな。
畑が終わると、手のよく入ったスギ林のなか。
足元に、モリノカレバタケが一つ、出ていた。
植林とアカマツの道は、ずいぶん長いが、鉄塔巡視路のため歩きやすい。
ちなみに、地形図「小高」にある破線路と登山道は、途中まではまったく別である。
小1時間歩いて、送電鉄塔。
鉄塔は、東北電力のものだが、送電線は、東京電力の第一原発の方向から来ていた。
送電線のうなる音が耳ざわりだが、展望はよい。
「新吉井戸」「座頭ころばし」などという地点を過ぎてしばしで、大山祇神社。
といっても、大きな社殿があるわけではなく、中くらいの祠だ。
「胎内くぐり」という狭いすき間もあるが、くぐっても服が汚れるだけのように感じたので、見て過ぎた。
懸の森の山頂は、アカマツとスズタケのヤブの中。
展望皆無。休む場所もないので、先へ行く。
やせた尾根を行くと、立石。
ここはちょっとした露岩帯で、海側の展望が開ける。
なかなか気持ちのよいところだった。
毘沙目木三角点(522m)は、小広く伐開された中にあり、近所の一等三角点がどの方向にあるかを示す表示板が、つけられていた。
それによると、浜通りの一等三角点は、丸森の手倉山、日隠石、屹兎屋山、大滝根山、二ツ石山と、ここ毘沙目木だそうだ。
ひと息いれて先へ向かうと、すぐに大富林道終点。
ここは、めちゃくちゃな皆伐をしたらしく、まるで樹木の地獄のようなありさまだった。
この林道もひどいもので、沢の至るところに廃家電が投棄され、汚れきっていた。
懸の森から先、後半部分については、これから本格的に整備するのかもしれないが、これはなんとかしないと、ハイカーも歩く気にならないだろう。
長く感じる林道歩きが続いたあと、ようやく羽倉口の分岐。
そこから、あぜ道まですぐだった。
畑に出ると、2頭の猿が、そばの木にかけ登った。
ここも猿か。
猿と戦いながら、これだけのネギを作るのはたいへんだろうと、同情した。